2023年度を踏襲するので、以下は2023年度のメモを微修正中。
以下の説明を、高校生の知識レベルや興味レベルに合わせて、自分の言葉で説明できるように、一通り頭の中に入れておくように。
これは、3Dプリンタで木材みたいな材料を作れないかっていう研究です。 木材みたいに向きによって固さの違う材料を異方性って言うんです。 木材は、せん断変形って言って、こんなふうに(分厚い概要集のせん断変形を見せながら)、 長方形が平行四辺形になるみたいに(角度が)変形しやすいんです。 そういう材料を3Dプリンタで作れないかっていう研究です。
もっと詳しく聞きたそうだったら: この研究室では、橋とか色んな構造のシミュレーションをやってますけど、 シミュレーションっていうのは、ちょっと条件を変えると答えがぜんぜん変わってしまったりするので、 実物や模型で実際に実験してみて(シミュレーションと比較する)ということは大事です。 複雑な構造の模型や試験体をつくるのは難しいですが、 コンピューターで3Dモデルをつくってさえしまえば、3Dプリンタでそのままの形を印刷することができます。 金属みたいな異方性のない構造物なら、3Dプリンタで形を再現することができれば十分かもしれませんが、 木材みたいな異方性のある構造物の試験モデルは、異方性も再現できる必要があるわけです。 なので、異方性も再現した試験体モデルを作れないかという研究です。
これ、見たことありますか。YouTubeとかで「15個の振り子」で検索するといっぱいヒットすると思います。 こうやって揺らすと27秒(15個の場合、12個は21秒)で、また元に戻るように長さを調整しています。 角振動数って聞いたことありますか。 単振動の式で\( \sin\omega t \)とか\( \cos\omega t \)みたいなの見たことないですか。 あれが単振動の式なんですが、その\( \omega \)が角振動数です。 \( \sin \)か\( \cos \)かというのは、重りがどの位置にいるときを時刻0とするかで変わってくるだけなので、 どっちでもいいんですが、重りの位置は、\( \sin\omega t \)とか\( \cos\omega t \)みたいな式で表されるから、 (パネルが近くにあるなら、パネルの\( \cos(\omega_{1}t+\Delta\omega t) \)の\( \Delta\omega t \)を指しながら、 隣り合う振り子の位相差がちょうど\( 2n\pi \)になれば、隣り合う振り子どうしの重りの位置がそろうということです。 なので、隣りどうしの振り子の角振動数の差(パネルがあるなら、「この\( \Delta\omega \)ですね」)が、 ぜんぶ同じになるように、振り子の長さを調整してあるんです。
もっと聞きたそうだったら:こういう長さの調整は、計算しないとわからないんですが、 手で計算するのはなかなか難しいです。(ちょうどいいところを見つけるのに、何回も計算しなくちゃならないので)。 なので、何回も同じ計算を繰り返したりするときは、プログラムを組むと便利です。 あそこのパソコン(ノート)で、振り子のシミュレーションをやらせてます。 なんか変な音楽が鳴ってますが、これは、振り子の位置とドレミファの音階を対応させた音楽です。 まあ、遊びですけど、 プログラムが組めるようになると、音楽に限らず、色々と遊びの幅が広がります。
これは、虹橋といって、釘とか金具を使わずに、木材だけでアーチ状に橋を組む技術です。 1000年ぐらい前の中国の絵に虹橋は描かれています(パネルの絵)。 ただ、これと同じ構造の橋がレオナルド・ダ・ビンチのスケッチにも描かれているので、 (パネルのダ・ビンチの橋)、「ダ・ビンチの橋」として紹介されることも多いです。 ダ・ビンチの方が中国の絵よりも400年ぐらい後ですが、 ダ・ビンチが、虹橋の絵を見る機会があったのか、たまたま同じ構造を思いついたのか、 そこはわかりません。 こういう複雑な構造は、一本一本の木材にどんなふうに力が作用しているかは、 なかなか手計算で調べるのは難しいですが、3Dモデルを作って構造解析してやると、 どんな力が作用しているのかということも、わかります (Salome-Mecaをいじりながら)。 例えば、赤いところは圧縮されているとか、青いところは引っ張られているとか、 色んなことがわかります。
アーチだから圧縮ですか? 虹橋の一本一本の部材は、3点曲げを受けているので、 曲げが作用します。マジックハンドの3点曲げにも似てますが、独特の構造だと思います。 木材は引張にも抵抗するので、この構造が可能だということになります。 例えば石とかでアーチを組む場合は、圧縮で自重に抵抗するようなアーチ構造にする必要があります。 そのアーチも実はあるんです。 (興味がありそうだったら、実験室奥の木アーチを持ってきて見せる)
これは、秋田県立大やウッディさんないとの共同研究です。 秋田とか山の多い地域では、山の中に登山道を木橋でかけてほしいというニーズが結構あります。 木橋だと山の中の自然の景観に馴染むということです。 ただ、秋田の山は(森吉山も太平山も)基本的に豪雪地帯で、 橋のまわりに、こんなふうに(パネル上右)雪が貼り付いてしまうので、 雪の荷重がものすごく大きくなります。 雪のせいで橋が落橋することもあります。 だから、豪雪地帯に木橋をかける場合は、鋼材(鉄の板)とかで補強して ハイブリッドな構造してやる必要があります。 そのようなハイブリッドな木橋も我々は提案しているのですが(パネル上左)、 こうした橋は、鉄の材料のぶん、コストも高くなるし、 歩道橋なのに、雪の重さに抵抗するために、ものすごく頑丈なハイスペックな橋になってしまいます。 要は、冬の雪の荷重さえ、どうにかかわすことができれば、 そこまで頑丈なハイスペックな橋にする必要はないわけです。 そこで考えたのが、この床版開閉式木橋です。 冬の間は、この床版(歩くとこですね)を、こんなふうに立てて蓋を開けておけば、 雪が穴に落ちるので、雪の荷重がかからないというわけです。 実際に、試験モデルを雪の多そうな羽後町に設置して観測しましたが(パネル下)、 雪が穴から落ちて、雪荷重の影響が半分ぐらいに減ることが確認できました。 この構造は今、特許出願もしています。