小さい字は補足説明や余談なので、読み飛ばしてもいいです。
第5回で、 $M(x)=-EIv''(x)$という式を導いた。 静定梁で梁の曲げモーメントがわかるなら、 この式を使えば、 それを2回積分してたわみが求まるので、これはなかなか便利な式だ。 では、不静定梁で、力のつりあいから曲げモーメントが求まらない場合は どうしたらいいだろう。 今回は、もう少し強力?な式を導いてみる。
任意の境界条件で任意の外力を受けてつりあっている梁の微小部分を切り取って、
この微小部分の力のつりあいを考えてみる。
図では単純梁にしているが、別に不静定梁でも構わない。
外力は、鉛直方向には、$q(x)$で表される分布外力が
作用しているものとする。
微小部分の長さは$dx$とし、
この微小範囲では鉛直方向の分布荷重外力$q(x)$
は等分布していると見なせることにしておく。
切り取られたことによってできた両端の切断面には、
この切り取られた部分だけでつりあいが成り立つような
内力としての断面力が
図心($x$軸)に作用していることにする。
この微小部分は外力$q(x)$を受けているので、
左端の断面力と右端の断面力は大きさが同じ(で向きが逆)にはならない。
左端でのせん断力を$S(x)$, 曲げモーメントを$M(x)$とすると、
そこから$dx$だけずれた右端でのこれらの変化量は、
「瞬間の変化率」
$
\frac{dS(x)}{dx}, \;\;
\frac{dM(x)}{dx}$
に$dx$をかけて、
それぞれ、
$
\frac{dS(x)}{dx}dx, \;\;
\frac{dM(x)}{dx}dx$
と表せるから、右端の軸力、せん断力、曲げモーメントは、それぞれ、
$
S(x)+\frac{dS(x)}{dx}dx, \;\;
M(x)+\frac{dM(x)}{dx}dx$
と表せる。
(参考:
(応力のつりあい)
これらを用いてこの微小部分の力のつりあいを考えると
$\sum\downarrow=-S(x)+q(x)dx+(S(x)+\frac{dS(x)}{dx}dx)=0$
$\sum_{A}\circlearrowleft=-M(x)-q(x)dx\frac{dx}{2}-(S(x)+\frac{dS(x)}{dx}dx)dx
+(M(x)+\frac{dM(x)}{dx}dx)
=0$
となる。
分布荷重$q(x)$は長方形分布とみなしているから、
荷重の合計は$q(x)dx$を長方形の重心に作用させると、
点Aからのモーメントの腕の長さは$\frac{dx}{2}$。
2つめのモーメントのつりあいの式に関して、
$q(x)dx\frac{dx}{2}$や$(\frac{dS(x)}{dx}dx)dx$
は$d$のつく微小量の2次項なので微小と見なして無視して整理する。
もう少し厳密に言うと、2次項は、
分子の$d$の数ひく分母の$d$の数が2つ以上の項ということ。
すると、
$-S(x)dx+\frac{dM(x)}{dx}dx=0$
となるから、両辺を$dx$で割って整理すると、以下の関係が得られる。
$S(x)=
\frac{dM(x)}{dx}$
(重要)
これは、材料力学Iで
モーメント図を描くときに使ってきた $S(x)=M'(x)$の式である
(参考:構造力学(基礎)第6回)。
つまり、梁モデルのせん断力は曲げモーメントの微分で与えられるということになる。
また、
$y$方向のつりあい式を同様に整理すると:
$\frac{dS(x)}{dx}+q(x)=0$
となるが、これに上の
$S(x)= \frac{dM(x)}{dx}$
を代入すると、曲げに関するつりあい式は、以下のようになる。
$\frac{d^{2}M(x)}{dx^{2}}+q(x)=0$
となる。微分を$'$で表すなら、以下のように書いてもよい。
$M''(x)+q(x)=0$
また、$x$方向のつりあい式を整理すると、
軸力のつりあい式は以下のようになる。
梁モデルの仮定では、 初等梁にはせん断変形がないことになっていた。 そうすると、せん断ひずみはゼロになり、せん断応力もゼロと いうことになってしまうが、どうしてせん断力は存在するのだろうか。 これは、梁モデルがやや強引な仮定をしたことによる、 ちょっと変な点である。 この辺の事情について、興味がある人は、 構造力学(応用)第5回、 第9回参照。
さて、上で導いた
曲げに関するつりあい式
$M''(x)+q(x)=0$
に、
曲げモーメント-たわみ関係
$M(x)=
-EIv''(x)$
を代入すると、以下のような
のような図心変位$v$(たわみ)の微分方程式が導かれる。
$-EIv''''(x)+q(x)=0$
(最重要)
これを梁の支配(微分)方程式とか、
特にたわみに関する式をたわみの微分方程式とか言う。
上の式で$x$の関数になっているのは、
変位($v$)の微分と分布外力($q$)だけだから、
外力($q$)の式がわかっていれば、
モーメントの式$M(x)$がわからなくても、
これらの式を積分して、
静定梁のたわみを$M=-EIv''$を積分して解いた
のと同じ要領で境界条件と連続条件等
を使って積分定数を決定すれば、
不静定梁でもたわみを求めることができる。
梁の微分方程式を積分して、 たわみや断面力などを求める際、 たわみ$v$の微分($v', v'', v'''$など)がたわみ角や断面力と どのように関係付けられているかということを知っていないと、 境界条件や連続条件などを適切に利用することができない。 そこで、以下にたわみの微分とたわみ角や断面力との関係式をまとめておく。
図の不静定梁のたわみが
$v(x)=\frac{q}{48EI}(2x^{4}-5\ell x^{3}+3\ell^{2}x^{2})$
で与えられるとき、
せん断力$S(x)$, 曲げモーメント$M(x)$,
反力$V_\text{A}, M_\text{A}, V_\text{B}$を求めよ。
答えはここ。
図の不静定梁のたわみが
$v(x)=\frac{q}{24EI}(x^{4}-2\ell x^{3}+\ell^{2}x^{2})$
で与えられるとき、
せん断力$S(x)$, 曲げモーメント$M(x)$を求めよ。
答えはここ。
2022年度小テスト:
小テスト221214
2020年度小テスト:
問1-4,
解答
集中荷重を受ける場合など、不静定梁で場合分けが必要な場合の解法は、
この授業ではやらないが、興味のある人は構造力学(応用)第11回参照。
前回 導いた梁の支配微分方程式
$-EIv''''(x)+q(x)=0$
を用いて、図のような1次不静定の梁を解いてみよう。
左端から右端まで等分布荷重が作用する問題は、
場合分けしなくていいから、
4回積分すると積分定数が4つですみ、
両端の境界条件だけで解けてしまう。
梁の支配微分方程式は$-EIv''''+q=0$だから、
$EIv''''=q\;\;\;\;$これを4回積分していく。
$EIv'''=qx+A$
$EIv''=\frac{q}{2}x^{2}+Ax+B$
$EIv'=\frac{q}{6}x^{3}+\frac{A}{2}x^{2}+Bx+C$
$EIv=\frac{q}{24}x^{4}+\frac{A}{6}x^{3}+\frac{B}{2}x^{2}+Cx+D$
4回積分すると、$A, B, C, D$の4つの積分定数ができる。
境界条件は、左端でたわみとたわみ角が$0$から、
$v(0)=0, v'(0)=0$
これは、まあいいだろう。あと、右端がローラー支承でたわみはないから、
$v(\ell )=0$
これもまあいいだろう。
積分定数は4つだから、あと1つ境界条件が必要だ。
右端はローラー支承で、回転を許すから、モーメント反力は発生しない。
曲げモーメントは$M(x)=-EIv''(x)$で表されるから、
$M(\ell)=-EIv''(\ell)=0$が使える。つまり、
$v''(\ell )=0$
これで条件式が4つになり、積分定数が求まる。
$EIv'(0)=C=0$
$EIv(0)=D=0$
$EIv''(\ell)=\frac{q}{2}\ell^{2}+A\ell+B=0$
$EIv(\ell)=\frac{q}{24}\ell^{4}+\frac{A}{6}\ell^{3}+\frac{B}{2}\ell^{2}=0$
これらを連立させて
$A=-\frac{5}{8}q\ell $
$B=\frac{q\ell^{2}}{8}$
よってたわみは
$v=\frac{q}{48EI}(2x^{4}-5\ell x^{3}+3\ell^{2}x^{2})$
せん断力は
$S=-EIv'''=-qx-A=\frac{q}{8}(-8x+5\ell )$
曲げモーメントは
$M=-EIv''=-\frac{q}{2}x^{2}-Ax-B=\frac{q}{8}(-4x^{2}+5\ell x-\ell^{2})$
$S(x)$や$M(x)$を求めれば、せん断力図や曲げモーメント図も描ける。
図は、$S$-図、$M$-図、$v$-図。
反力は、
前回の例題参照。
今度は、図のように不静定梁が端部に外力モーメントを受ける問題を解いてみよう。
この問題は、端部に外力モーメント$M_{0}$が作用しているものの、
梁の途中に外力はなく、$q(x)=0$となり
$q(x)$は$0\le x\le\ell$で1つの式で表されるので場合分けは不要である。
$-EIv''''(x)+q(x)=0$から、
$-EIv''''=0$ となるが、右辺が0なので、$-EI$で割ってしまおう。
$v''''=0\;\;\;\;$ もちろん、$-EI$をつけたまま計算したい人はそれでもよい。
積分定数が変わってくるだけの話だ。
これを4回積分していく。
ついでに、分数の計算がいやな人は、4回積分したものを
$v=ax^{3}+bx^{2}+cx+d$みたいにおいてしまうというやり方もある。
$v'''=A$
$v''=Ax+B$
$v'=\frac{A}{2}x^{2}+Bx+C$
$v=\frac{A}{6}x^{3}+\frac{B}{2}x^{2}+Cx+D$
境界条件は、右端が固定端でたわみとたわみ角がないので、
$v(\ell)=0, v'(\ell)=0$
左端はローラー支承でたわみがないので、
$v(0)=0$
ここまではいいだろう。
さて、ローラー支承は、
上の問題では、
ヒンジが回転を許すからモーメントは発生しないと言ったが、
今回は、ローラー支承にモーメント外力が作用している。
つまり、ローラー支承部の曲げモーメント$M(0)=-EIv''(0)$は0にはならずに、
モーメント外力とつりあうことになる。
ローラー支承部の近傍($x=0$に限りなく近いところ)を切断して、
モーメントのつりあいを考えてやる。
$\sum\circlearrowleft=-M_{0}+M(0)=0\;\;\;\;$つまり
$M(0)=-EIv''(0)=M_{0}\;\;\;\;$が条件式として使える。つまり
$-EIv''(0)=-EI(A\cdot 0+B)=M_{0}$から $B=-\frac{M_{0}}{EI}$
$v(0)=D=0$
$v'(\ell)=\frac{A}{2}\ell^{2}-\frac{M_{0}}{EI}\ell+C=0$
$v(\ell)=\frac{A}{6}\ell^{3}-\frac{M_{0}}{2EI}\ell^{2}+C\ell=0$
これらを連立させて
$C=\frac{M_{0}\ell}{4EI}\\$
$A=\frac{3M_{0}}{2\ell EI}$
よってたわみは、
$v(x)=\frac{M_{0}}{4\ell EI}(x^{3}-2\ell x^{2}+\ell^{2}x)$
参考までに、$S$-図、$M$-図、$v$-図。
$M(x)=-\frac{M_{0}}{2\ell}(3x-2\ell)$
$S(x)=-\frac{3M_{0}}{2\ell}$
$V_{A}(上が正)=-\frac{3M_{0}}{2\ell}$
$V_{B}(上が正)=\frac{3M_{0}}{2\ell}$
$M_{B}(下側引張が正)=-\frac{M_{0}}{2}$
図の不静定梁のたわみを求めよ。
曲げ剛性は$EI$とする。
答えはここ。
図の不静定梁のたわみを求めよ。
曲げ剛性は$EI$とする。
答えはここ。
2022年度小テスト:
小テスト221221
2020年度小テスト:
問1-2,
解答
メモ: