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構造力学II第11回

小さい字は補足説明や余談なので、読み飛ばしてもいいです。

このページのオリジナルの作者は 後藤文彦です。
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構造力学IIオンライン授業用テキスト
第11回オンライン授業

目次

不静定梁のたわみ(場合分けあり)

./png/kotehin.png 前回、 不静定梁の途中に集中外力や部分的な分布荷重等がなく、 $q(z)$が梁の全域で1つの式($q(z)=0$)で表される場合について、 $-EIv''''(z)+q(z)=0$を4回積分して、両端の境界条件だけを4つ考慮して、 たわみを求めた。 今回は、図のように梁の途中に集中外力がある不静定梁を考える。 $q(z)$自体は、 $0\le z \le \ell$でも $\ell \le z\le 2\ell$でも $q(z)=0$で、$z=\ell$のところを考えなければ、 1つの式で表されていると言えなくもないが、 構造力学I第6回の 集中外力を受ける単純梁の曲げモーメントから推測する限り、 恐らく、不静定梁でも、このように梁の途中に集中外力を受けた場合は、 集中外力より左側と右側とで、曲げモーメント$M(z)$は、 異なる式で表されるであろう。 その前提で、 梁を集中外力$P$よりも左側の領域 $0\le z \le \ell$と 右側の領域$\ell \le z\le 2\ell$で場合分けして、 $-EIv''''(z)+q(z)=0$をそれぞれの領域ごとに 積分してみる。 第8回で、 $M(z)=-EIv''(z)$をそれぞれの領域で場合分けしたのと同じ要領だ。

左側の領域($0\le z \le \ell$)のたわみを$v_{左}$, 右側の領域($\ell \le z\le 2\ell$)のたわみを$v_{右}$と書いて 区別することにすると、それぞれの領域で集中外力はなく、 $q(z)=0$だから、
$EIv_{左}''''=0\;\;\;\;(0\le z \le \ell )$
$EIv_{右}''''=0\;\;\;\;(\ell \le z\le 2\ell )$

それぞれ$z$について 4回積分してみると、

$0\le z \le \ell $ について
$EIv''''_{左}=0$
$EIv'''_{左}=A$
$EIv''_{左}=Az+B$
$EIv'_{左}=\frac{A}{2}z^{2}+Bz+C$
$EIv_{左}=\frac{A}{6}z^{3}+\frac{B}{2}z^{2}+Cz+D$

$\ell \le z\le 2\ell $ について
$EIv''''_{右}=0$
$EIv'''_{右}=F$
$EIv''_{右}=Fz+G$
$EIv'_{右}=\frac{F}{2}z^{2}+Gz+H$
$EIv_{右}=\frac{F}{6}z^{3}+\frac{G}{2}z^{2}+Hz+J$
となる。積分定数が$A,B,C,D,F,G,H,J$の8個あるので、 条件式が8個必要である。
まず境界条件として使えるのは、 左の固定端でたわみとたわみ角が0つまり
$v_{左}(0)=0$, $v'_{左}(0)=0$
と 右のローラー支承でたわみとモーメントが0つまり
$v_{右}(2\ell )=0$, $v''_{右}(2\ell )=0$
の4つの条件で、これらの条件から、
$C=0$
$D=0$
$G=-2F\ell $
$J=\frac{8}{3}F\ell^{3}-2H\ell $
となる。 これらを代入して式を書き直すと、

$0\le z \le \ell $ について
$EIv''''_{左}=0$
$EIv'''_{左}=A$
$EIv''_{左}=Az+B$
$EIv'_{左}=\frac{A}{2}z^{2}+Bz$
$EIv_{左}=\frac{A}{6}z^{3}+\frac{B}{2}z^{2}$

$\ell \le z\le 2\ell $ について
$EIv''''_{右}=0$
$EIv'''_{右}=F$
$EIv''_{右}=Fz-2F\ell $
$EIv'_{右}=\frac{F}{2}z^{2}-2F\ell z+H$
$EIv_{右}=\frac{F}{6}z^{3}-F\ell z^{2}+Hz+\frac{8}{3}F\ell^{3}-2H\ell $
となる。

第8回でやった 連続条件が使えるのは、 中央の集中荷重載荷部で、たわみとたわみ角が等しい、つまり
$v_{左}(\ell )=v_{右}(\ell )$
$v'_{左}(\ell )=v'_{右}(\ell )$
の2つの条件で、これらの条件から、
$\frac{A}{2}\ell^{2}+B\ell +\frac{3F}{2}\ell^{2}=H$と
$\frac{A}{6}\ell^{2}+\frac{B}{2}\ell -\frac{11}{6}F\ell^{2}=-H$
の2式が求まり、辺々足して整理すると、
$4A\ell +9B-2F\ell =0$
となる。 さて、未知数8個に対して境界条件4つと、連続条件2つ使ったが、 あと2つの条件式が必要である。 ここで、中央の集中荷重載荷部の微小部分を図のように薄くスライスして 切り取ってみる。

./png/suraisupl.png この微小部分の切断面に作用するせん断力と曲げモーメントは、 第9回でやった公式を用いて、 $v_{左}$と$v_{右}$の微分を使って表すことができる。 左の切断面は、$z=\ell$より僅かに左側と考えて$v_{左}$の微分を適用し、 右の切断面は、$z=\ell$より僅かに右側と考えて$v_{右}$の微分を適用すると、 左の切断面にはせん断力$S_{左}(\ell )=-EIv_{左}'''(\ell)$と 曲げモーメント$M_{左}(\ell )=-EIv_{左}''(\ell)$が作用し、 右の切断面にはせん断力$S_{右}(\ell )=-EIv_{右}'''(\ell)$と 曲げモーメント$M_{右}(\ell )=-EIv_{右}''(\ell)$が作用し、 微小部分に集中荷重外力$P$が作用している。
この集中荷重外力が作用する微小部分のつりあい条件を考えると
$\sum\downarrow=-S_{左}(\ell )+P+S_{右}(\ell )=0$
となる。また、このスライスの厚さが0だとしてモーメントの つりあいを考えると
$\sum\circlearrowleft=-M_{左}(\ell )+M_{右}(\ell )=0$
となる。 これらをたわみの微分を用いて書き直すと、以下のようになる。
$-(-EIv_{左}'''(\ell ))+P+(-EIv_{右}'''(\ell ))=0$
$-(-EIv_{左}''(\ell ))+(-EIv_{右}''(\ell ))=0$
と書け、残りの2つの条件式が得られる。 これらの式から
$A=F-P$
$A\ell +B=-F\ell $
が得られる。 まず、
$4A\ell +9B-2F\ell =0$
$A=F-P$
$A\ell +B=-F\ell $
の$A,B,F$についての連立方程式を解けば、
$B=\frac{3}{8}P\ell $
$F=\frac{5}{16}P$
$A=-\frac{11}{16}P$
が求まる。すると、
$H=\frac{A}{2}\ell^{2}+B\ell +\frac{3F}{2}\ell^{2}=\frac{P\ell^{2}}{2}$と
$G=-2F\ell =-\frac{5}{8}P\ell $
が求まり、
$J=\frac{8}{3}F\ell^{3}-2H\ell =-\frac{P\ell^3}{6}$
が求まる。

よって、
$v_{左}(z)=\frac{P}{96EI}(-11z^{3}+18\ell z^{2})\\$
$v_{右}(z)=\frac{P}{96EI}(5z^{3}-30\ell z^{2}+48\ell^{2}z-16\ell^{3})$

まとめると、
$ v(z)= \begin{cases} \frac{P}{96EI}(-11z^{3}+18\ell z^{2}) \;\;\;\;&(0\le z \le \ell )\\ \frac{P}{96EI}(5z^{3}-30\ell z^{2}+48\ell^{2}z-16\ell^{3}) \;\;\;\;&(\ell \le z\le 2\ell) \end{cases} $
せん断力は、
$S_{左}(z)=-EIv_{左}'''(z)=-A=\frac{11}{16}P\\$
$S_{右}(z)=-EIv_{右}'''(z)=-F=-\frac{5}{16}P$
まとめると
$ S(z)= \begin{cases} \frac{11}{16}P \;\;\;\;&(0\le z \le \ell )\\ -\frac{5}{16}P \;\;\;\;&(\ell \le z\le 2\ell ) \end{cases} $
曲げモーメントは、
$M_{左}(z)=-EIv_{左}''(z)=-Az-B=\frac{P}{16}(11z-6\ell )$
$M_{右}(z)=-EIv_{右}''(z)=-Fz-G=\frac{5P}{16}(-z+2\ell )$
$M_{左}(\ell )=M_{右}(\ell )=\frac{5}{16}P\ell $
まとめると
$M(z)= \begin{cases} \frac{P}{16}(11z-6\ell ) \;\;\;\;&(0\le z \le \ell )\\ \frac{5P}{16}(2\ell-z) \;\;\;\;&(\ell \le z\le 2\ell ) \end{cases} $

./png/sakouhinsmv.png $S$-図、$M$-図、$v$-図。

例題

例題1

図の不静定梁のたわみを求めよ。 曲げ剛性は$EI$とする。
答えはここ

例題2

図の不静定梁のたわみを求めよ。 曲げ剛性は$EI$とする。
答えはここ

例題3

図の不静定梁のたわみ$v(z)$を、 $-EIv''''(z)+q(z)=0$を4回積分して求めたい。
$v(z)= \begin{cases} v_{1}(z)\;\;\;\;&(0\le z\le \frac{\ell}{3})\\ v_{2}(z)\;\;\;\;&(\frac{\ell}{3}\le z\le \ell)\\ \end{cases} $
とおくとき、
①境界条件(4つ)
②点Cでの連続条件(2つ)
③点Cでのつりあい条件(2つ)
を$v$の微分を用いた式で表わせ。 答えはここ

例題4

図の不静定梁のたわみ$v(z)$を、 $-EIv''''(z)+q(z)=0$を4回積分して求めたい。
$v(z)= \begin{cases} v_{1}(z)\;\;\;\;&(0\le z\le 2\ell)\\ v_{2}(z)\;\;\;\;&(2\ell\le z\le 3\ell)\\ \end{cases} $
とおくとき、
①境界条件(4つ)
②点Cでの連続条件(2つ)
③点Cでのつりあい条件(2つ)
を$v$の微分を用いた式で表わせ。 答えはここ

目次

2022年度小テスト: 小テスト230111
2021年度小テスト: , 解答
2020年度小テスト: 問1-3 (境界条件4つ、$z=3L$での連続条件2つ、 $z=3L$でのつりあい条件2つ), 解答
メモ: