[Google] [ウィキペディア] [附属図書館] [ シラバス ] (構力I) (構力II) (構造メモ) (構造実験) (フォートラン) (後藤資料)

マトリクス構造解析 第7回

オンライン用テキストの準備中:6/24(水)までに用意します。 小さい字は補足説明なので、読み飛ばしてもいいです。

マトリクス構造解析オンライン授業用テキスト
第7回オンライン授業

目次

梁の剛性方程式(軸力あり)

さて、前回、 軸力のない梁の剛性方程式を紹介したが、 これだと、軸力のある問題は解けないし、 座標変換もできない。 だから、(軸力が作用してなくても)まっすぐの棒しか解けない。 骨組だのラーメンだのが解けるようにするには、座標変換できるように しなければいけない。
$ \left( \begin{array}{c} S_{1}\\ M_{1}\\ S_{2}\\ M_{2} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{cccc} \frac{12EI}{\ell^{3}} & -\frac{6EI}{\ell^{2}} & -\frac{12EI}{\ell^{3}}& -\frac{6EI}{\ell^{2}} \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{4EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{2EI}{\ell} \\ -\frac{12EI}{\ell^{3}} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{12EI}{\ell^{3}} & \frac{6EI}{\ell^{2}} \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{2EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{4EI}{\ell} \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} v_{1}\\ \theta_{1}\\ v_{2}\\ \theta_{2} \end{array} \right) $
鉛直方向の 節点力$S_{1}, S_{2}$や節点変位$v_{1}, v_{2}$に関しては、 第3回の ばね要素でやったように、 水平方向の節点力$N_{1}, N_{2}$や節点変位$w_{1}, w_{2}$と組み合わせて、 $(S_{1}, N_{1})$, $(S_{2}, N_{2})$, $(v_{1}, w_{1})$, $(v_{2}, w_{2})$ といった2次元のベクトルにしてしまえば、 座標変換できるようになる。

第3回の ばね要素のときは、 せん断力成分$S_{1}$や$S_{2}$は生じていないのに、 座標変換できるようにするために、強引に導入した。 だから、剛性マトリクスのせん断成分がぜんぶ0みたいな変なマトリクスを 使った。 今回は、水平方向(軸方向)の剛性には、ちゃんと、ばねの剛性方程式を 適用すれば、それらを組み合わせるだけで、 いいのではないだろうか。 あれ、ばね要素のときと同様に、 $(S_{1}, N_{1})$, $(S_{2}, N_{2})$, $(v_{1}, w_{1})$, $(v_{2}, w_{2})$ がベクトルとして座標変換できるのはいいとして、 モーメント$M_{1}, M_{2}$や回転角$\theta_{1}, \theta_{2}$は、 どうすればいいのだろうか。 実は、2次元の場合、$yz$平面上のモーメントというのは、 常に$x$軸右ねじまわりのモーメントで、 $yz$平面上の回転角というのは、常に$x$軸右ねじまわりの回転角なので、 全体座標系($yz$系)でも、 局所座標系($y^{\ell}z^{\ell}$)系でも、大きさが変わらない。 つまり、2次元の場合は、座標が回転しても、 座標変換する必用がないのである。
というわけで、上記の軸力のない梁の剛性方程式と、 ばねの剛性方程式を 組み合わせてみる。 ここで注意が必用である。 第3回の ばね要素のときにも 話したが、右手系の座標変換行列で座標変換するには、 ベクトルの成分の並べ順を$x\rightarrow y\rightarrow z$の順に 並べなければならない。 ここでは $yz$座標系を使っているから、$y\rightarrow z$の順だ。 そうすると、節点力は、 $(S_{1}, N_{1})$のようにせん断力成分、軸力成分の順になるし、 節点変位は、$(v_{1}, w_{1})$のように、軸直角変位成分、軸方向変位成分の 順になる。 モーメントや回転角は、ある意味、どこに入れてもよいが、 節点力、節点変位の次に入れることにして、 節点1, 節点2の順に節点力ベクトル、節点変位ベクトルを並べると、 以下のように、軸力がある梁の剛性方程式が与えられる。
全体系の梁の剛性方程式(軸力あり)
$ \left( \begin{array}{c} S_{1}\\ N_{1}\\ M_{1}\\ S_{2}\\ N_{2}\\ M_{2} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{cccccc} \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & -\frac{6EI}{\ell^{2}} & -\frac{12EI}{\ell^{3}}& 0 & -\frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 & 0 & -\frac{EA}{\ell} & 0 \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{2EI}{\ell} \\ -\frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & -\frac{EA}{\ell} & 0 & 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{2EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} v_{1}\\ w_{1}\\ \theta_{1}\\ v_{2}\\ w_{2}\\ \theta_{2} \end{array} \right) $
曲げ剛性を$EI$で書いているのに合わせて、 ばね定数も 伸び剛性$EA$の方で$k=\frac{EA}{\ell}$を使って 書いておく。
この梁の剛性方程式は、$yz$座標の$z$軸に梁が横たわる梁の剛性方程式なので、 違う座標系を使っているテキストや論文の剛性方程式の 並び方や成分の符号は、これとは違う形になる。 文献にのっている剛性方程式(梁要素に限らず、板要素でも立体要素でも)を 利用してプログラムを組んだりする場合は、 常に、どういう座標系を用いて、節点力や節点変位がどう定義されているか ということに注意を払う必用がある。

座標変換

さて、骨組やラーメンなど、様々な向きを向いた要素を扱うには、 第3回のばね要素のときと同様に、 要素の軸の向きが$z^{\ell}$となるような 局所系($y^{\ell}z^{\ell}$系)で、 局所系の剛性方程式をつくり (局所系で見ている人にとっては、上の全体系の剛性方程式と同じ形になる)、 それを座標変換して、全体系の節点力、節点変位で表してから、 重ね合わせて全体剛性方程式を組み立てればよい。 というわけで、 全体系($yz$系)より$x$軸右ねじまわりに$\phi$だけ回転した 局所系($y^{\ell}z^{\ell}$系)で、 剛性方程式を考えると、 節点力や節点変位の記号が違うだけで、 ($y^{\ell}z^{\ell}$系)における$y^{\ell}$方向、$z^{\ell}$方向の力学挙動は、 ($yz$系)における$y$方向、$z$方向の力学挙動と同じだから、 局所系の剛性方程式が、上の全体系の剛性方程式の 節点力と節点変位を局所系の記号で置き換えたものとして、以下のように得られる。 今回、節点変位ベクトルの回転角成分に$\theta$の記号を使っているので、 座標変換のための座標の回転量は、紛らわしいので$\phi$を用いることにする。
局所系の梁の剛性方程式(軸力あり)
$ \left( \begin{array}{c} S_{1}^{\ell}\\ N_{1}^{\ell}\\ M_{1}\\ S_{2}^{\ell}\\ N_{2}^{\ell}\\ M_{2} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{cccccc} \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & -\frac{6EI}{\ell^{2}} & -\frac{12EI}{\ell^{3}}& 0 & -\frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 & 0 & -\frac{EA}{\ell} & 0 \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{2EI}{\ell} \\ -\frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & -\frac{EA}{\ell} & 0 & 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{2EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} v_{1}^{\ell}\\ w_{1}^{\ell}\\ \theta_{1}\\ v_{2}^{\ell}\\ w_{2}^{\ell}\\ \theta_{2} \end{array} \right) \ \\ $
これを全体系に座標変換するには、 第4回の ばね要素のときのように、 剛性マトリクスの両側から、座標変換の転置行列と座標変換行列とをかけて やれば、よさそうだ。 ちょっと違うのは、モーメントと回転角があることだ。 さっき言ったように、2次元平面では、モーメントや回転角は座標変換 する必用がない。 どうしたらいいだろう。 モーメントと回転角を考えなければ、 第4回の ばね要素と同様に、 全体系の節点力、節点変位は、座標変換行列$\mathbf{T}$を用いて、 以下の関係が成り立つだろう。
$ \left( \begin{array}{c} S_{1}^{\ell}\\ N_{1}^{\ell} \end{array} \right) =\mathbf{T} \left( \begin{array}{c} S_{1}\\ N_{1} \end{array} \right) \\ $
$ \left( \begin{array}{c} S_{2}^{\ell}\\ N_{2}^{\ell} \end{array} \right) =\mathbf{T} \left( \begin{array}{c} S_{2}\\ N_{2} \end{array} \right) \\ $
$ \left( \begin{array}{c} v_{1}^{\ell}\\ w_{1}^{\ell} \end{array} \right) =\mathbf{T} \left( \begin{array}{c} v_{1}\\ w_{1} \end{array} \right) \\ $
$ \left( \begin{array}{c} v_{2}^{\ell}\\ w_{2}^{\ell} \end{array} \right) =\mathbf{T} \left( \begin{array}{c} v_{2}\\ w_{2} \end{array} \right) \ \\ $
では、上の節点力ベクトルと節点変位ベクトルの末尾に、 モーメントの成分と回転角の成分を加えて、 それらには、何もしない座標変換行列を定義しなおしたらどうだろうか。 つまり、全体系から局所系への座標変換行列を、 以下のように定義しなおすと、
$ \mathbf{T} = \left( \begin{array}{rrr} \cos\phi & \sin\phi & 0 \\ -\sin\phi & \cos\phi & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{array} \right) \ \\ $
各節点の全体系における節点力と節点変位は、 $\mathbf{T}$を用いて以下のように 局所系に座標変換できる。
$ \left( \begin{array}{c} S_{1}^{\ell}\\ N_{1}^{\ell}\\ M_{1} \end{array} \right) =\mathbf{T} \left( \begin{array}{c} S_{1}\\ N_{1}\\ M_{1} \end{array} \right) \\ $
$ \left( \begin{array}{c} S_{2}^{\ell}\\ N_{2}^{\ell}\\ M_{2} \end{array} \right) =\mathbf{T} \left( \begin{array}{c} S_{2}\\ N_{2}\\ M_{2} \end{array} \right) \\ $
$ \left( \begin{array}{c} v_{1}^{\ell}\\ w_{1}^{\ell}\\ \theta_{1} \end{array} \right) =\mathbf{T} \left( \begin{array}{c} v_{1}\\ w_{1}\\ \theta_{1} \end{array} \right) \\ $
$ \left( \begin{array}{c} v_{2}^{\ell}\\ w_{2}^{\ell}\\ \theta_{2} \end{array} \right) =\mathbf{T} \left( \begin{array}{c} v_{2}\\ w_{2}\\ \theta_{2} \end{array} \right) \ \\ $
つまり、モーメントと回転角に対しては、何も変えないといことだ。 さて、これらを上の 局所系の梁の剛性方程式に代入して整理すれば、 第4回の ばね要素の全体系の剛性方程式 と同様に、 以下のような形の全体系の梁の剛性方程式が得られる。
$ \left( \begin{array}{c} S_{1}\\ N_{1}\\ M_{1}\\ S_{2}\\ N_{2}\\ M_{2} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{ll} \mathbf{T}^{T} & \mathbf{O}\\ \mathbf{O} & \mathbf{T}^{T}\\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{cccccc} \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & -\frac{6EI}{\ell^{2}} & -\frac{12EI}{\ell^{3}}& 0 & -\frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 & 0 & -\frac{EA}{\ell} & 0 \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{2EI}{\ell} \\ -\frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & -\frac{EA}{\ell} & 0 & 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{2EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} \end{array} \right) \left( \begin{array}{cc} \mathbf{T} & \mathbf{O}\\ \mathbf{O} & \mathbf{T}\\ \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} v_{1}\\ w_{1}\\ \theta_{1}\\ v_{2}\\ w_{2}\\ \theta_{2} \end{array} \right) \ \\ $

例題

図のような片持ち梁の先端に、鉛直荷重と水平荷重が 作用している問題を1要素の梁の要素剛性方程式で解いてみる。
外力条件は、$S_{2}=P, N_{2}=Q$, それ以外は0.
境界条件は、$v_{1}=w_{1}=\theta_{1}=0$
よって、

$ \left( \begin{array}{c} 0\\ 0\\ 0\\ P\\ Q\\ 0 \end{array} \right) = \left( \begin{array}{cccccc} 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & 0 & 0 & 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 \\ 0 & 0 & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} v_{1}\\ w_{1}\\ \theta_{1}\\ v_{2}\\ w_{2}\\ \theta_{2} \end{array} \right) \ \\ $
5行目は、$Q=\frac{EA}{\ell}w_{2}$だから、$w_{2}=\frac{Q\ell}{EA}$. これはフックの法則のばねの伸びを求めてるだけ。
4行目と6行目は、
$\frac{P\ell^{3}}{12EI}=v_{2}+\frac{\ell}{2}\theta_{2}$
$0=v_{2}+\frac{2\ell}{3}\theta_{2}$
これらを連立させて、 $\theta_{2}=-\frac{P\ell^{2}}{2EI}$, $v_{2}=\frac{P\ell^{3}}{3EI}$. これは前回、 軸力のない片持ち梁で計算したのと同じ答え。
求まった節点変位を、もとの要素剛性方程式に代入して、 節点の近傍で切り離された切断面に作用する内力としての 節点力を求める。
$ \left( \begin{array}{c} S_{1}\\ N_{1}\\ M_{1}\\ S_{2}\\ N_{2}\\ M_{2} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{cccccc} \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & -\frac{6EI}{\ell^{2}} & -\frac{12EI}{\ell^{3}}& 0 & -\frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 & 0 & -\frac{EA}{\ell} & 0 \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{2EI}{\ell} \\ -\frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} & \frac{12EI}{\ell^{3}} & 0 & \frac{6EI}{\ell^{2}} \\ 0 & -\frac{EA}{\ell} & 0 & 0 & \frac{EA}{\ell} & 0 \\ -\frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{2EI}{\ell} & \frac{6EI}{\ell^{2}} & 0 & \frac{4EI}{\ell} \end{array} \right) \left( \begin{array}{c} 0\\ 0\\ 0\\ \frac{P\ell^{3}}{3EI}\\ \frac{Q\ell}{EA}\\ -\frac{P\ell^{2}}{2EI} \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} -4P+3P\\ -Q\\ 2P\ell-P\ell\\ 4P-3P\\ Q\\ 2P\ell-2P\ell\\ \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} -P\\ -Q\\ -P\ell\\ P\\ Q\\ 0\\ \end{array} \right) \ \\ $

求まった内力としての節点力 ($S_{1}$とか$N_{1}$とか)を、そのまま描いてみる。 次に、実際の向きで描き直してみる。
軸方向は$Q$の引張が作用してつりあっている。 鉛直方向は上に$P$と下に$P$でつりあっているが、 時計回りに$P\ell$のモーメントが発生する。 そのモーメントと左端の反時計まわりに$P\ell$のモーメントが つりあっている。


2020年度 小テスト 問1, 問2, 解答