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構造力学II第7回

小さい字は補足説明や余談なので、読み飛ばしてもいいです。

このページのオリジナルの作者は 後藤文彦です。
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構造力学IIオンライン授業用テキスト
第7回オンライン授業

目次

第5回で、断面の 曲げモーメントとたわみの関係が
$M(z)=-EIv''(z)$
と表されることが示された。 曲げモーメント$M(z)$がたわみ$v(z)$の2階微分で表されているということは、 曲げモーメント分布が力のつりあいで求まる静定梁なら、 これを$z$について2回積分すればたわみ$v(z)$を$z$の関数として求めることが できそうである。

片持ち梁

ということで、 構造力学I第6回で 曲げモーメント$M(z)$を求めた片持ち梁のたわみ$v(z)$を求めてみよう。 曲げ剛性は$EI$とする。 構造力学I第6回で、
$M(z)=-P(\ell -z)\;\;\;\;(0\le z\le\ell)$ と求まっているから、
$M(z)=-EIv''(z)$ にこれを代入すれば、$-P(\ell -z)=-EIv''(z)$となる。 左右を入れ替えて、$(z)$を省略すると、
$EIv''=P(\ell-z)$  となる。 $M(z)$は、$(0\le z\le\ell)$で1つの式で表されて場合分けはないから、 この微分方程式が、$(0\le z\le\ell)$で成り立つと考えられる。 つまり、この式をそのまま場合分けせずに積分していけばいいだろう。 まずこれを1回積分すると、
$EIv'=P(\ell z-\frac{z^{2}}{2})+A$  ここに$A$は積分定数。もう1回積分すると、
$EIv=P(\frac{\ell}{2}z^{2}-\frac{z^{3}}{6})+Az+B$  ここに$B$は積分定数。

$A, B$の値を決めるには、境界条件というのを使う。 時間に関する微分方程式では、初期条件から積分定数を決めたりしたと思うが、 それと同じように、梁の問題では、支承で固定されている点のたわみが0といった 条件が使える。 このように境界条件を与えて微分方程式を解く問題を 境界値問題と言う。 ちなみに、初期値を与えて微分方程式を解く問題は初期値問題。
この場合、左端の$z=0$が固定端となっており、ここでたわみは発生しないので、 $v(0)=0$となる。 積分定数は、$A, B$の2個なので、これらを決定するには、 もう一つ条件がいる。 固定端の場合、図のように、固定端部で梁は$z$軸に接するように変形する。 つまり、固定端部では、たわみの傾き$v'(z)$が0となる。 つまり、この場合は、左端$z=0$で$v'(0)=0$である。 また、後で説明するが、ある点でのたわみ$v(z)$の傾き$v'(z)$は、その点での 梁の回転量を表すことからたわみ角と言う。 たわみ角をこの座標の$x$軸右ねじまわり回転角$\theta_{x}$として定義するなら、 $z$が正方向に増えたときに、$v$が$y$の正方向に増えると、 時計回り($x$軸左ねじ回り)になるので、$\theta_{x}=-v'$となるが、 境界条件を使うときは、$v'=0$とおくだけなので、 たわみ角の符号は気にしなくてよい。
境界条件:$v(0)=0, v'(0)=0$
まず、$v'(0)=0$より、
$EIv'(0)=P(\ell\cdot 0-\frac{0^{2}}{2})+A=0\;\;$ よって、$A=0$
次に、$v(0)=0$より、
$EIv(0)=P(\frac{\ell}{2}\cdot 0^{2}-\frac{0^{3}}{6})+A\cdot 0+B\;\;$ よって、$B=0$
よって、$v(z)=\frac{P}{6EI}(3\ell z^{2}-z^{3})\;\;$
先端のたわみ:$v(\ell)=\frac{P\ell^{3}}{3EI}$

等分布荷重(単純梁)

./png/tantou.png では、 構造力学第7回で 曲げモーメント$M(z)$を求めてある等分布荷重を受ける単純梁のたわみを 求めてみよう。 曲げ剛性は$EI$とする。 曲げモーメントは、 構造力学第7回で求めたように、
$M=\frac{q}{2}(\ell z-z^{2})\;\;\;(0\le z\le\ell)$
とこれも$(0\le z\le\ell)$で1つの式で表されるから、場合分けせずに、 そのまま積分できる。
$M=-EIv''$より
$EIv''=\frac{q}{2}(z^{2}-\ell z)$
$EIv'=\frac{q}{2}(\frac{z^{3}}{3}-\frac{\ell }{2}z^{2})+A$
$EIv=\frac{q}{2}(\frac{z^{4}}{12}-\frac{\ell }{6}z^{3})+Az+B$
境界条件は、両端$z=0$と$z=\ell$に支承があり、ここはたわまないので、 $v(0)=0, v(\ell )=0$である。

ちなみに、ヒンジ支承、ローラー支承は、回転できるから、支承の たわみ角 $v'(0), v'(\ell )$は0にはならない。 ちなみに、 $v'$は、$z$が正方向に増える際に、$v$が$y$の正方向に増える傾きだから、 図の左端の時計回り回転角は$v'$だが、 図の右端の反時計回り回転角は$-v'$になる。とはいえ、 境界条件を考える時は、 $v'=0$とおくだけなので、$v'$の向きや符号は気にしなくてよい。 $v(0)=0, v(\ell )=0$だけで既に境界条件は2つあるから、$A, B$が求まる。
境界条件:$v(0)=0, v(\ell )=0\;\;$
まず、$v(0)=0$より
$EIv(0)=\frac{q}{2}(\frac{0^{4}}{12}-\frac{\ell }{6}\cdot 0^{3})+A\cdot 0+B=0\;\;\;\;$よって、$B=0$
次に、$v(\ell)=0$より
$EIv(\ell)=\frac{q}{2}(\frac{\ell^{4}}{12}-\frac{\ell }{6}\ell^{3})+A\ell+0=0\;\;$ よって、 $A=\frac{q\ell^{3}}{24}$

よって、 ${\displaystyle v=\frac{q}{24EI}(z^{4}-2\ell z^{3}+\ell^{3}z)}$
中央のたわみ: ${\displaystyle v\left(\frac{\ell }{2}\right)=\frac{5q\ell^{4}}{384EI}}$

最大の直応力

./png/h.png この梁の断面が、図のようなH型をしていたとして、 このとき、断面に生じる最大の直応力$\sigma_{zz}$を求めてみたい。 構造物が外力を受けた場合に、材料が破壊するかどうかというのは、 応力を調べることで判断できるので、 最大の応力が発生している場所と大きさを見極めるのは 重要なことである。 曲げモーメント$M(z)$は既にわかっているので、 応力を求めるには、 第5回で導いた
${\displaystyle \sigma_{zz}(y,z)= \frac{M(z)}{I}y}$
の関係を用いればよい。まず、断面2次モーメントは、 第6回でやった 長方形の公式($\frac{bh^{3}}{12}$)を利用するとすると、 両端の縦に細長い長方形2つと、真ん中の薄っぺらい長方形1つの 足し算と考えて、
$I=\frac{2t(9t)^{3}}{12}\times 2 +\frac{6t(2t)^{3}}{12}=247t^{4}$
$\sigma_{zz}$が最大になるのは、 $M(z)$と$y$が最大になるところだ。 $y$の(絶対値の)最大値は、断面の高さが$9t$で、 このH型断面の図心は上下対称で真ん中だから、 一番下の$y=\frac{9}{2}t$と 一番上の$y=-\frac{9}{2}t$だ。 $M(z)$の最大値は、 第7回のモーメント図を見て 判断すると、真ん中$z=\frac{\ell}{2}$の箇所とわかる。
つまり$M_{max}=M(\frac{\ell }{2})=\frac{q\ell^{2}}{8}$
$\sigma_{zz}=\frac{M}{I}y$より
$\sigma_{zz}(y=-\frac{9}{2}t, z=\frac{\ell }{2}) =\frac{\frac{q\ell^{2}}{8}}{247t^{4}}(-\frac{9}{2}t) =-\frac{9q\ell^{2}}{3952t^{3}}$
$\sigma_{zz}(y=\frac{9}{2}t, z=\frac{\ell }{2}) =\frac{9q\ell^{2}}{3952t^{3}}$

等分布荷重(片持ち梁)

./png/katatou.png では、等分布荷重を受ける片持ち梁のたわみも求めてみよう。 曲げ剛性は$EI$とする。 曲げモーメントは、各自、自力で求めること。 ちなみに、過去の構造力学Iの小テストの回答は ここ。 たわみまで求めているのはここ
$M=-\frac{q}{2}(z-\ell )^{2}$
$M=-EIv''$より
$EIv''=\frac{q}{2}(z^{2}-2\ell z+\ell^{2})$
$EIv'=\frac{q}{2}(\frac{z^{3}}{3}-\ell z^{2}+\ell^{2}z)+A$
$EIv=\frac{q}{2}(\frac{z^{4}}{12}-\frac{\ell }{3}z^{3}+\frac{\ell^{2}}{2}z^{2}) +Az+B$
境界条件: $v'(0)=0, v(0)=0$より
$A=0, B=0$
$v=\frac{q}{24EI}(z^{4}-4\ell z^{3}+6\ell^{2}z^{2})$
先端のたわみ: $v(\ell )=\frac{q\ell^{4}}{8EI}$

例題

例題1

図の片持ち梁のたわみ$v(z)$を求めよ。曲げ剛性は$EI$とする。 答えはここ

例題2

図の片持ち梁のたわみ$v(z)$を求めよ。曲げ剛性は$EI$とする。 答えはここ

例題3

図の片持ち梁のたわみ$v(z)$を求めよ。曲げ剛性は$EI$とする。 答えはここ

例題4

図の片持ち梁のたわみ$v(z)$を求めよ。曲げ剛性は$EI$とする。 答えはここ

例題5

図のように 左端ローラー支承、右端固定で等分布荷重$q$を受ける不静定梁について、 左端を原点として、梁軸に沿って右向き正に 座標$z$を取る。 この梁は不静定梁なので、力のつりあいから曲げモーメントを求めることは できないが、 この梁の曲げモーメントは 次式で与えられるものとする。
$M(z)= \frac{q}{8}(-4z^{2}+3\ell z)\;\;\;\;(0\le z\le \ell)$
不静定梁ではあるが、曲げモーメントがわかっているので、 $M=-EIv''$を積分すれば、たわみを求めることができる。 たわみ$v(z)$を求めよ。 曲げ剛性は$EI$とする。

梁の断面が図のような二軸対称な箱型断面をしているとき、 この箱型断面の中立軸回りの断面2次モーメント$I_{x}$を求め、 固定端部Bの断面に作用する最大の引張応力$\sigma_{\text{t}}^{\text{B}}$を求めよ。 答えはここ
これは、2013年度の期末試験。

目次

2022年度小テスト: 小テスト221130
2021年度小テスト: , 解答
2020年度小テスト: 問1, 解答
メモ: