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お知らせ

JABEE雑感

目次


はじめに

うちの学科は、私が秋田大学に来た2002年頃からJABEE受審の準備を始めて、 2004年に受審し、2005年にめでたく認定を受けた(2年だけど)のだけど、 その間に色々と思うところ(というか言いたいこと)は山ほどあって、 それを書いたら色々とまずいだろうから、できるだけ我慢していたのだけど、 ときどき、ついつい、言いたいこと(の一部)を覚え書きとしてウェブ上に メモしていたものが、だんだんたまってきてしまったので、 一応、ここにJABEE雑感のページとして独立させてみる。

先頭目次

卒論日誌!? 2003/4頃か? ことの発端

 うちの学科は、近い将来、 JABEE(日本技術者教育認定機構)の 審査を受ける準備をしております。で、 その認定基準の中に 「プログラムは学習保証時間(教員の教授・指導のもとに行った学習時間) の総計が1,800時間以上を有していること」というのがあって、 これを裏付ける「裏付資料」として 「卒業研究などの実時間記録」なるものを添付する必要があるらしいのですが、 具体的には、 卒業研究の学生に、卒業研究に関係してどんな学習や作業や研究を行ったかを 毎日 日誌につけさせるということになるみたいです。 学生さんからは、色々と不平が出そう。 というか私だって毎日 日誌を書けなんて言われたら困ってしまいます (なんせ、自分の好きなことばかり書いていいウェブ日記みたいなものですら、 恐らく三日以上は続かないだろうから。というか、 いずれは教職員も毎日 業務日誌をつけなければならないような時代がやってくる のであろうか) 。 学生さんにノートを渡して、 「では、みなさん、これから毎日 卒論日誌をつけてちょうだいね」 と言ったところで、学生さんが どんな日誌を書いてくるかはあまりにも容易に想像できてしまう。 私の貧弱な想像力で邪推するに、 例えばこんな感じのやつを いっしょうけんめい書いてくれるのではないだろうか。 勿論、これは JABEE の認定を受けるために必要なことで、 学科にとっても学生にとっても意味のあることに違いないんだろうけど、 でも、これって、 本当に教育的に意味のあることなのだろうか????  何かうまい譲歩案はないものだろうか。 私はちょっと上の方で(筆が滑って)ウェブ日記がなんとかと 書いたような気がするが、 研究者や教育機関関係者がウェブ上で公開している日記には なかなか面白く読めて色々と勉強になるものが多い。 例えば私がよく(〜たまに)訪れるのは、

この辺

とかだけど、この他にも、 けんきうする日記書きの会など、研究日記のリンク集とかはそれなりに検索できる だろう。 森山和道さんの 「研究者の方々へ、ウェブ日記のすすめ」は、 朝永振一郎の赤裸々な日記を紹介しながら、 「研究者の方々の生の姿を伝えるメディア・表現方法として」の ウェブ日記の意義を説いているが、 確かにこの手の「研究者のウェブ日記」は、 読者にとっても啓蒙的だし、書いている本人にとっても (読者から意外な意見や批判をもらえたりして)有意義な行為だと私は思う。 という訳でやや強引に結びつけるのだけど、 学生さんには、卒論日誌を書いてもらう代わりに (とは言っても、研究に関係のある こんな感じのことも 最低限は書き込んでもらうんだけど ) もう少し日常的なことも含めてもいいことにして、 ウェブ日記を書いてもらっうってのはどうだろうかと考えてみた (いや勿論、ウェブ日記なんか書きたくないから、 ノートにせこせことこんな感じ の卒論日誌を書いてる方がいいという学生には無理強いはしないんだけど、 先日、ある一人の学生に打診したところによると、 ノートに日誌を書くのはイヤだけど、ウェブ日記ならとても楽しそうだと 興味を持ってくれたというのもあるんだけど)。 そうすれば、学生さんも自分の文章が友人や私 (やもしかすると全世界の読者)に読まれてることを意識して、 日記書きを楽しんでくれるようになるかも知れないし、 更には、 卒業研究の内容に対して思わぬ読者から有益な助言や批判を戴けたり するかも知れない。また、 学生がウェブやHTMLに興味を持って、日記以外にも自分のウェブページを 作ってみようとしたりするようになるかも知れない。 まあ、来週 学生との顔合わせゼミがあるので、 そのときに学生の意見/意向を聞いて再考してみたい。 あと、JABEE の審査に提出する卒論日誌 (「卒業研究などの実時間記録」の裏付資料)を学科の方針として 手書きノートに統一するということになると、 この提案は残念ながらお流れである。

03/4/17追記: 「ちはるの多次元尺度構成法」 (これも研究者のウェブ日記)を書いている向後千春さんとこの 学生さんの卒論Web日記を書く授業の設計とその実践」 を見ると、大学で授業として「ウェブ日記を書かせる」という 試みが行われている「前例」も既にあるようだ ( 学生にウェブ日記を書かせるというのは、 そう非常識な提案でもないんじゃないだろうか―― 卒論日誌をノートに書かせるのと比べても…… )。 ついでに、 「日記スキーマの提案」もウェブ日記に関係した卒論みたい。

03/05頃?追記: その後、卒論日誌は、学生からメールとして提出してもらってもいいことになった。 Almail とかだと、特定のメールフォルダー内のメールを、 ヘッダー込みで一つのテキストファイルに統合してくれる機能があるから、 それを印刷して裏付け資料とすれば、それなりの証拠価値はあるかも知れない (メール受信者である私がヘッダーを偽造したりしない限りは、 送信者である学生側は、ヘッダーの送信日時などを操作したりする能力は ほぼないから)。

卒論日誌その後とJABEEについて(04/1/26)

言い出しっぺの法則 という訳ではないが、 私が、学科の卒論日誌の取りまとめをやらされることになったようだ。 で、私の個人的な意見としては、 作業時刻とか作業立会者といった 細々とした記載項目を こまめに記録することは、 別に学生の学習意欲や研究意欲をかき立てることには つながらないと思うから、 そういう細々とした記載項目はできるだけ割愛して、 報告頻度も毎日とかじゃなくて1週間ごととかでもいいことにして、 それよりは、ウェブ日記的に 作業内容に関連して好きなことも書けるような自由な形式 にしたいと思ってたんだけど、 この程度の細々とした記載項目は 必須事項となってしまった。

 私は JABEE のシステムをちゃんと理解してないんだけど、 だからまるでピント外れのことを言っているかも知れないけど、 なんか、もっと、 審査される側にとっても審査する側にとっても もう少し効率的で客観的な審査方法の在り方ってないのだろうか なんて思ってしまったりするのである。

 例えば、学生が卒業研究にどれくらいの時間 従事しているかという ことを示すために、教官たちは学生たちに件の「卒論日誌」を 書かせ、それから作業時間数を集計して数値化して資料を作成するのである。 この作業のために教官側も学生側もそれなりの時間を割かなければならなくなるが、 その割には、この作業自体は特に教育の改善につながるようなことではない (せいぜい、学生が「卒論日誌を書かなきゃないから学校へ行くか」と 学校に来るようになるとか、 教官が「学生に卒論日誌を書かせなきゃならんから学生室に行くか」と 学生とコンタクトを取る頻度が増えるとかぐらいでは)。 しかも、このやり方では卒論日誌のまとめ書きや改竄ができてしまうから、 証拠資料としての客観性もあまりない。

 それよりは、例えば JABEE 側で、 書込日時などが特定される (書き込んだ日時データが JABEE 所有のサーバーに送信されるように なってるとか)ウェブ日記書込用の cgi を用意してくれて、 大学側は大学のサーバーにその cgi をインストールして、 学生に、ウェブ日記を書かせ (まあ、学内とか学科内限定ということでもいいけど)、 教官も時々、学生の書込に返信したりする。 JABEE の審査員は、 その cgi が自動的に整形/集計するデータをもとに、 学生がどれくらいの頻度でウェブ日記に書き込み、 研究について話題にし、 教官がどれくらいの頻度で どれくらい親身になって学生に返信しているか などなどを、ネットワークを介して、 割と客観的に評価することができたりするかも知れない。 そして、こうしたシステムを導入することによる 教育改善の効果というのは、それなりにありそうな気がするのだけれど、 そううまくは行かないのかな。

JABEE 審査のために用意しなければならない 他の膨大な (裏付け)資料群についても、 同様の提案が機能しそうな (ように私には思える)例は多々あるけど、 また、そのうち(一般論として書くかも)。

04/8/17 雑感

 JABEE の自己点検書(100ページ近い本文の各所から、 800ページ近い引用・裏付資料の各所が引用されている)の資料の 作成に関わって思ったのは、 こういう膨大な資料に対する引用関係が交錯しているような文書こそ、 ハイパーテキストでリンクを張って作成するのが適しているし、 数百ページの紙をめくったり戻したりしながら読むよりも 読みやすいだろうなと。

 で、JABEE では、「……を開示しているか」「……を公開しているか」 といったことを紙の書類で 示すことを要求される訳だけど、 いっそのこと、 JABEE の自己点検書(の作成に必要な資料のうち、 学生の氏名などの個人情報を削除したものすべて)を (準備段階から) ウェブ上に公開して、学生でも誰でも自由に参照できるようにしてしまえば、 もはや、「開示している」や「公開している」ことを示す資料としては、 ウェブの URI だけでじゅうぶんというふうにはいかないものだろうか。

 誰か(JABEE かボランティアの人)が、 JA-blog とか JAB-Wiki みたいなウェブツールを開発して、 自己点検書を紙ではなく、電子データとして提出 (というか作成段階から公開されている) というようなシステムは成立し得ないものだろうか。 教官たちは、 ウェブ上で文章を推敲し、ウェブ上の各種資料にハイパーリンクを張り、 各種データをウェブ上にアップしていくと、 必要な表が自動生成されたり、 条件を満たしているかどうかを自動判定してくれたり、 文書から引用される(リンクされる)ことを要求されているのに まだアップされていない資料群のリストが表示されたり…… 作業は大幅に効率化されるし、 何(十)万枚もの紙も消費しなくて済むような気もするのだが……

 「こういうことをやっています」と看板では言っても、 その実体が公開されていない場合は、 「ほんとにこういうことをやっている」ということを証明するための 書類づくりに労力を割かなければならないかも知れないけど、 「こういうことをやっています」の実体をウェブ上などで 誰でも自由に参照できるようにしてある場合、 (公開の程度に応じて) 挙証責任は緩和されないものだろうか (今日の外部評価)。

ウィキで卒論日誌 (04/4/19追記)

 2004年度は、 ウィキで卒論日誌を書かせてみようかと 検討中である。 ところで、JABEE 審査のために作成しなければならない膨大な資料群は、 ウィキツールで(作業分担しながら)作成していくのが 適しているように私には 思えてしまうのだけど、 ためしに、 jabee wiki とかのキーワードで検索しても、 今のところ、wiki で JABEE 資料の作成を試しているところは見当たらない。
結城浩さんのWikiの本 を読んでみると、学校や会社でも、これからどんどん Wiki の利用可能性が 広がっていくように期待される。 こういう (誰もがネットワークにつながるパソコンを持って仕事をしている時代に対応した) ツールの便利さが、 (指導的な立場にいる人たちにも) じゅうぶんに啓蒙されるようになれば、 「なんでもかんでも紙の文書として作成して提出してもらわなければ、 証明や認定ができない* というシステムが徐々に変わっていってくれるだろうか……

JABEE の認定基準?

 ところで、 2004 JABEE Faculty Workshop の資料 (この資料が検索できないのだが、取り敢えず 「 jabee "w.a.水準" 」のキーワードで検索) によると、 JABEE の認定というのは、おおざっぱに言うと、

の二つの条件を満たしているかどうかで審査されるようだ。 そうすると、 ワシントンアコードの水準をぎりぎりで満たす(低い)公表目標を掲げた大学が、 その公表目標をぎりぎりで満たしていれば合格し得るし、 ワシントンアコードの水準より遥かに高い公表目標を掲げた大学が、 (ワシントンアコードの水準は余裕で満たしていても) 自分たちが掲げた公表目標をぎりぎりで満たしていなければ不合格となり得る。 つまり、 JABEE に合格しているかどうかということは、 必ずしも、その大学の(絶対的な)水準の高さを 示していることにはならないのである。 「少なくともワシントンアコードの水準は満たしてますよ」ということと 「大学が掲げている公表目標の看板に偽りはないですよ」ということを 保証しているだけである。 このような認定制度の認定を受けている大学かどうかということは、 (少しでも優秀な人材を集めたい)企業側にとっては、 参考になる情報なのだろうか……  へんな話だが、 求人対象がちょうどワシントンアコードの水準近辺にあるような企業にとっては、 「少なくともワシントンアコードの水準は満たしてますよ」という保証は、 それなりの指標になるのかも知れない*。

* 熊大土木のJABEEのページ によると、 JABEEの認定を受けた教育プログラムの卒業生は、 「技術士補に相当する修習技術者の資格付与」 「技術士など、各種資格試験を受験するまでの期間短縮」 「海外の大学での取得単位の互換が可能」 「海外の資格試験の受験などが可能」 などのメリットがあるということのようです。 なんといっても、最も大きいのは、技術士の1次試験が免除になるらしいことでしょう。 JABEEのページ は、技術士の1次試験免除について具体的なことをまるで書いててくれないから、 判断に迷うけど、 日本技術士会 の「 認定された教育課程の修了者について 」のリストに登録されれば、 まあ、情報として信頼していいでしょう。 実際問題として、技術士の1次試験免除はおいしすぎます。 問題を見ると分かるけど、生物とかエネルギーとか多肢にわたっていて、 そこそこ難しいです。

JABEE の資料づくりが膨大でたいへんになる理由の一つは、 「指定された資料を指定された形式で作成すればよい」のではなくて、 「自分たちが 自分たちの公表目標を満たしていることを証明する方法や資料の形式を 自分たちで考えさせられる」という部分にあると思う。 「自分たちが掲げている看板に偽りはありませんよ」ということを 証明しようとする場合、これはある程度 仕方のないことだと思う。 しかし、 もし 企業側が必要としている情報が、「看板に偽りがないか」どうかではなく、 「大学のレベルの指標になりそうな絶対的な基準 (例えばワシントンアコードの水準)を満たしているか」どうかということだ としたら、 「ワシントンアコードの水準を満たしているか」どうかだけを 認定する認定プログラムがあると とても有り難いような気が個人的にはする。 「ワシントンアコードの水準」という(JABEEよりは)絶対的な基準を満たしているかどうかを 証明するだけだったら、かなりの文書は 「指定された資料を指定された形式で作成すればよい」 ようになってくれるのではないだろうか。 そして、そういう文書の作成は、 ウェブツールの利用に対しても親和性が高いような気がするのだが…… 

*  ウェブ上に研究日記を公開して、 多くの研究者や学生たちと有意義で建設的な双方向のやりとりをしている 田崎 晴明さん の「今日の FD」のコーナーは、 とても示唆に富み、JABEE の資料作成の励みになる。
今日の FD: 10/8/2003(水)
今日の FD: 4/9/2004 (金)
今日の FD:4/16/2004 (金)

JABEEツールの開発

某月某日(書込日時は匿名): JABEEでは、 日本技術者教育認定基準 の中で、 「a) 地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養」 「b) 技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、および技術者が社会に対して負ってい る責任に関する理解(技術者倫理)」 「c) 数学、自然科学および情報技術に関する知識とそれらを応用できる能力」 …… といった学習・教育目標を示している。 JABEEを受ける学科が、 この学習・教育目標の達成度を示すためにやらなければならないことを すごく大雑把に言うと、 これらの目標に対応する具体的な「学習・教育目標」を細分化して (デザイン能力とかコミュニケーション能力とか)設定し、 全授業科目の一つ一つに対して、 これらの「学習・教育目標」のどれと対応しているかを明確にし、 これらの「学習・教育目標」のそれぞれを学生が達成していることを 評価するのに、 どの目標は、どの科目とどの科目の中で、どういう方法によって評価するのか ということをすべての目標について示し、 全学生が、すべての目標を達成するように授業を履修して 目標を達成したと評価されるだけの成績を取ったことを示す必要がある。 こうした各目標と各科目との対応(更には科目どうしの関連などなど)が 複雑に交錯する状況を把握するために、 JABEE側で指定したフォーマットの各種の表 (2004年度版だと 表3, 表6, 表9など)を作成しなければならないし、 学生がちゃんと目標達成に必要な科目を履修していることを示すために、 学生に「ポートフォリオ」なる単位修得表を書かせて (場合によっては集計したり)しなければならないし、 学生が、履修可能な科目をどのような組み合わせで履修した場合でも、 JABEEで設定している学習・保証時間を満たすことを示す各種の表 (2004年版だと表4, 表5など)を作成しなければならない。 こうした各種の表を作成するには、膨大な作業が必要となり、 教育や研究の本来の業務をそれなりに犠牲にしなければならない のも実状であろう。

で、切実に思うのだが、 こうした資料作成をもっと効率化するツールを、 誰かその能力のある奇特な方が作ってくれないかなあと。 とは言っても、 ただでさえ、資料作成のために本来の業務を犠牲にしている方々の場合、 「自分が効率化のために割いた労力によって、将来、 自分自身がラクになる」という見積がなければ、 そんな何の業績にもならないことのために更なる労力を割こうとは思わないだろう。 でも、 専門が、「ネットワーク上のデータベースなんとかの構築」とか、 「ウェブを用いたインターフェースのなんとか」とか、 そっちの方(どっちの方?)のことをやっている方で、 JABEEの資料作成ツールを開発することが、自分自身の研究業績にもなり、 自分の属してる学科(更には全国の大学・高専)の資料作成の効率化にもなる という方々が、その手のツールを(できることならオープンソースで) 開発してくれたりなんて、虫の良い話がどこかで持ち上がらないかなあと。

私が想定しているツールの概要は、 まず、JABEEを受ける各学科ごとの学習・教育目標を入力する。 各学科の教官は、ウェブの入力画面から 自分の担当する全科目について、 シラバスを入力する際に、学科のどの学習・教育目標と対応するかを 入力し、それぞれの学習・教育目標をどのような方法で評価するかと どの科目と関連するかを入力する。 他の科目から関連すると入力された科目は、 シラバス入力画面で「この科目は、○×工学を受講する前に履修しておくことが 望ましい科目として入力されていますが、これを承認しますか?」 みたいに表示され、「承認ボタン」をクリックすると、 科目どうしが関連づけられる。 あと、「学習・保証時間」が (講義、演習、実験・実習の)単位数に対応する授業時間から自動的に 算出されない卒論のような科目については、 「学習・保証時間」の「独自設定」の欄に学科が設定する 学習・保証時間を記入しておく。

基礎教養の科目など、 複数の学科から異なる学習・教育目標を設定されている科目については、 その科目のシラバスに、学科ごとの学習・教育目標とそれらの評価方法を 各学科から入力できるようにする。 その科目の担当教官が、 シラバス入力画面を開くと、 「この科目は、○●学科の△▲と■■の教育目標と対応し、 △▲を評価するには、××に関するレポートで評価し、 ■■を評価するには、○△に関する試験で評価することの承認が求められています」 みたいな表示が、いっぱい出てきて、 教養の先生は、それらを注意深く読んで一つずつ「承認ボタン」をクリックしていく。 承認できない場合は、 学科担当者への「返信」欄のところに、 「この科目は、○●についてはやらないので、××にしてくれませんか」 みたいに書いて調整する。

このように大学で開講している全科目について、 学科ごとの教育目標とその評価方法が入力された時点で、 各学科ごとのシラバス、 教育目標と対応科目と評価方法と科目どうしの関連といった交錯した 関係を表す一連の表(表3, 表6, 表9など)が各学科ごとの 教育目標に対応して自動生成される。 また、各学科の学生が取りうる全科目が、それぞれどの教育目標に対応し、 どれだけの学習・保証時間が設定されているかという表(表4)や、 卒業に必要な単位をどういう組み合わせで取ったとしても、 1800時間の学習・保証時間は満たしますという表(表5)も自動生成される。

更に、各学科ごとに学生用の ポートフォリオ確認画面が自動生成される。 ポートフォリオ確認画面には、 学科ごとの教育目標と対応させた科目の履修状況が、 教務の成績データから自動生成され、 学生は、自分がどの教育目標をどの程度達成しているのかを グラフなどに可視化して実感することができる(なんてね)。 自分のポートフォリオ へのアクセスは ID とパスワードで行う。 セキュリティ上の問題があるなら、 これに関しては教務が印刷して渡すってことでもいい。 で、卒業時の学生が、教育目標も学習保証時間も満たしていることを 示す表も自動生成される。

……こーんなツールがあったら(1学科に限定した機能でもいいから)、 JABEEの資料作成もだいぶラクになるのに、 と妄想してしまう今日この頃であった。 というか、 この作業を現に話し合いと手作業でやっているってことなんだけど…… (混乱しまくり)

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オブジェクト指向、UMLとJABEE (05/9/7)

最近、ちょっと勉強した方がいいかなあと、UML関係の本をパラパラと 眺めていたのだけど、企業あたりでは、ここ最近、 業務分析や業務モデリング、 そうした業務を処理するソフトウェア開発に UMLが活用されているらしい実態を 垣間見て、世の中はそういう感じになっていたのかと、 自分の知らない世界の奥の深さを改めて思い知る。 で、UMLの図式化は、業務の分析や把握という目的がとても効率よく 達成されるようにうまくできているんだなあ(きっと)と 感じる一方で、JABEE受審のために必死に作成した膨大な 資料群(いわゆる自己点検書)の独特の構成や、 (2次元平面上でかろうじて可読可能な形に整理するのにとても苦労する) 多種多様な表は、大学における教育業務 (履修管理、成績処理、教育目標達成度や 進学条件の判定など)を 分かりやすく分析・把握できるようになっているとはとても言いがたい。 だから、苦労して自己点検書を作成しても、 (勿論、それは受審のためには必要なものだけど)それが、 自分たちの業務内容の分析・把握・点検にはそれほど役に立っていないような 気がしてしまう。 で、JABEEツールとの絡みで 空想(妄想?)してしまうのだが、 自己点検書を現在のような構成・形式で書かせるのではなく、 「教育目標を達成するための教育業務」をどのように分析・モデリングし、 システム開発するかという視点から、 UMLで描かせるという発想はピント外れであろうか。 検索してみると、 大学システムの概念モデルをUMLクラス図で描いたり しているものがない訳でもない。 UMLを使うにせよ使わないにせよ、こういう業務モデリングを きちんとやれば、 JABEEツール みたいな履修・成績管理ツールの開発にもつながるかも知れないし、 それなら、教育業務の効率化や点検しやすさにもちゃんと つながるように思えてしまう。 ロボットのソフトウェア設計のUMLモデルを競う?らしい UMLロボットコンテスト なるものがあるようだが、 教育目標を効率的に達成するための履修・成績管理ツールのUMLモデルを 競うコンテストみたいなものは成立し得ないのだろうか。 で、優勝校には、そのモデル通りのツールを無償で開発してくれるとか。

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認定後の雑感05/6/16

どうやら土木環境工学科は、 JABEEの認定を受けた (2年だけど)。 いやー、めでたし、めでたし。 これで、 もう少し書きたいことを書いても大丈夫かも知れない。 まず、(受審年とその次の年の卒業生は?) 技術士の1次試験が免除になるというのは、あまりにおいしすぎると思う (但し、 JABEEのページ は、技術士の1次試験免除について具体的なことをまるで書いててくれないから、 日本技術士会 の「 認定された教育課程の修了者について 」のリストに登録されるかどうかを適宜、確認して下さい。 どの卒業年の卒業生が対象になるかということについては、 いずれ学科のウェブページ上でも確認できるようにするとは思うけど)。技術士受験を応援するページ」 の1次試験を眺めてみれば、 うちの学科を卒業しさえすれば余裕で受かるはずの試験なのかどうかは 察しが付くだろう。 みなさんはこの1次試験に受かる自信はありますか。 私はないけど(笑)。 これが免除されるのであれば、本当においしい (苦労して自己点検書を作成した教官こそ1次試験免除にしてほしい)

さて、JABEE認定に受かるように対処する (教育目標を設定し、その目標を達成していることを示す書類を 作成できるように、教育改善のための会議をいっぱいやって カリキュラムを見直して議事録を たくさん作成して、試験の答案をコピーして保管して…) によって、本当に教育効果が高まり、 学生に技術士1次試験の合格者相当の 学力(や技術者としての倫理や適性)が身に付くのなら、 それはなかなかいいことだと思う。 でも、現実問題として、そんなことはまずないだろう。 学生に技術士1次試験の合格者相当の 学力(や技術者としての倫理や適性)を身に付けさせたいのなら、 授業をそういう方向性で充実させることに労力を割いた方がいい。 現行のJABEEの審査方式は、 授業自体を充実させる方向に改善する誘因が弱い (というか、その効果の割りには資料作成のために 授業改善に割くべき本来の業務を犠牲にする要素が強すぎる) ように感じてしまう。

現行のJABEEの審査方式は、おおざっぱに言うと、 まず、目標を細かく設定した書類、 その目標を達成する方法を細かく示した書類、 その方法で目標が達成されていることを示す証拠資料、 等々の書類を作成して提出することによって行うのだが、 こうした書類の作成自体は、授業(や卒論指導)を 直接的に充実させることではないし、 むしろ授業(や卒論指導)に割くべき労力を削ぐ方向にすら 働き兼ねない (この辺の話題に関して、 ジョアオ・マゲイジョ 『 光速より速い光(アインシュタインに挑む若き科学者の物語) 』 p.262に紹介されているイギリスの教育評価 TQA: Teaching Quality Assessmentの批判に私は思わず深く共感して!しまった。 とても痛快な語り口なので、ぜひここに引用したいが、 ちょっと怖いのでやめておく)。

こうした側面は、どんな認定審査でも、 認定という制度の性質上、ある程度は避けられない ものかも知れないけど、なんかもっと、 審査のために必要な資料を作成することが、そのまま 授業(や卒論指導)の充実にも直接的に結びつくような 審査の方向性というのはないものかと考えてしまうのである。 例えば、 授業の質(目的を達成しているかどうか)を調べたいなら、 「こういう目的を達成するために、 こういう授業を設計し、 こういう評価方法によって、目的を達成したことを示します」 みたいな書類を書かせるよりは、 授業のテキストをウェブ上に公開させるなり、 授業のビデオ映像をウェブ上に公開させるなりすれば、 審査員はそれをウェブ上で見て評価すればいいし (書類と違って授業内容を捏造しにくいし)、 なにより、こうした公開教材として資料を作成することは、 学生にとっても (ウェブを学習に利用したい学科外の人にとっても) そのまま有用だと思うし、 公開してしまうと不特定の人からの批判や修正意見も寄せられそうだから、 オープンソース的な改善も期待できるかも知れない。 ただ、そんなふうに何から何まで公開させられるのはイヤだという 人もいるだろう(私だって公開したくないものはある)。 つまり、例の 「やってることを公開してしまうほど挙証責任は緩和されるけど、公開したくない人はその程度に応じて一生懸命 資料づくりをしなければならない」 という話になるのだけれど、 どうも、現行の JABEE では、 「公開性」を強調しつつも、 結局は「挙証性」(つまり挙証のための資料作り)の 方に重点が置かれすぎているのではないかと感じてしまう。 公開教材や公開授業、学生の成果物の公開など、 教育改善に直接的につながりそうな資料についての 「公開性」を強調するなら大いに結構だけど、 その代わり、 教育改善には直接的にはつながらない (教育業務に割くべき時間と労力を犠牲にする)ような 「挙証のため」だけの資料作りは、 なるべく免除する方向に変わっていってほしいものだ。

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蛇足:一次試験を受けてみた

技術士の一次試験がどんなものかを知っておくという 意味で、05年10月にこっそり仙台で一次試験を受けてみた。 建設部門はちょっと自信がなかったので (というか、苦手な水理や土質の勉強をしたくなかったので)、 ためしに情報工学部門で受けてみた (子供時代にデジタル回路とかに興味を持った知識が この年になって初めて試験の役に立った。 といっても、ソフトウェア工学だのネットワークだののことも、問題集でそれなりに勉強したけど)。 で、 合格発表 (の下の方の16F00012番)を見ると、どうやら合格したらしい。そのうち合格通知が届いたら、 記念に(証拠に)スキャンして置いておくか (という訳で、 合格証)。 これで、私はJABEE認定の卒業生のみなさんとようやく同じ土俵に立ったということか。 さて、二次試験を受けるかどうかだけど、資格的には、 「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての 計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務に 従事した期間が通算7年を超える者」(詳細)に該当しそうなので、 一次試験に合格した時点で二次試験の受験資格があるってことだろうか。 二次試験は、一次試験の合格部門にかかわらず、どの部門でも受けていいので、 受けるとすれば建設部門だろう (「サーバー管理やってます」なんてのは情報工学部門の業務経験論文のレベルには遥かに及ばないから)。 かといって実務経験のない私の場合、建設部門の業務経験論文もかなり厳しい。 「鋼構造およびコンクリート」の経験論文問題(平成17年度)は、 「 あなたが経験した鋼構造の計画、調査、試験、研究、設計、製作、現場施工、維持管理、技術指導などの業務において、下記の3設問について答えよ。 」 みたいな感じで、一応、「研究」についての業務で経験論文を書くことも不可能ではないようだ。 大学の教官で実務経験がなく、研究についての業務経験論文のみで二次試験に合格している人っているのだろうか。 情報を収集したいところだ。 これからはJABEEの関係で大学教官の受験者も増えてくると思うのだが。 受験資格的には問題ないようなので 二次試験も受けてみたが、 やはり業務経験論文が駄目だったようで 不合格 だった。そう甘くはない。 それはともかく、 何時間もひたすら書き続ける試験は、 首と手がなかなか痛くなるものだ (キーボードから打ち込みだとだいぶ 楽なのだが。分からない漢字を どう他の語彙でごまかすかという 苦労もないし)。

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受審校研修会に参加

2010/5/7-5/8に土木学会主催で行われた JABEEによる教育プログラム認定・審査のための 「土木および土木関連分野」、 「環境工学およびその関連分野」受審校研修会 に参加してきた。 研修会の(特に質疑などの)内容は、公式公開される までは、詳しく書くことはできないが、 研修を一通り聞いて、私のJABEEに対する認識(偏見?)が 少し修正された部分があるので、ここに書いておく。 JABEE側でも、私がここに書いているように、挙証のためだけの 膨大な資料作りに時間や労力が割かれてしまい 本来の教育に手が回らなくなってしまうことは本末転倒だと 認識しており、挙証のために要するこうした無駄な作業を 排除していこうと模索しているようだ。 その実践の一例として、2010年度の認定基準では、 それまで 卒論作業などを含めた「学習保証時間」1800時間以上を要求していた規定を、 卒論作業などを含めない「授業時間」1600時間以上と変更した (認定基準(2010 年度適用版)の改定の趣旨と要点)。 つまり、このページで私が苦言を呈している 卒論日誌みたいな作業をやめさせたいということのようだ。 もっとも、124単位中の多くの科目で、 90分授業15回で2単位を与えている大学の場合(うちもそうだ)、 授業時間だけで1600時間を保証するのは、それはそれで厳しいが、 JABEE側の趣旨には賛同する。 この方針で、表1〜表9も、必要最小限の表だけにして、 書式ももっともっと簡略化されることを期待している。

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リンクなど

FIT2005シンポジウム―JABEEおよび情報処理学会と日本技術士会の連携―( 「技術士とJABEEの問題点」天野 英晴氏(慶大)のスライド(pdf)は、 なかなか共感できることをはっきりと明快に指摘している。 「直接、顧客のためにならず、JABEE認定だけのためにしなければならないことを、最小化、できればゼロにして欲しい」 「資料収集、保管、証拠集め等の資料主義、 官僚主義、証拠主義は止めよう」 「多少精度が下がっても例えばwebのみで簡単に審査できるようにしよう」 )

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khmhtg, JABEE批判、JABEE問題、JABEEの問題点、JABEEの功罪、 本末転倒、創成型科目、イギリス、SD(Staff Development)