オンライン用テキストの準備中:7/1(水)までに用意します。 小さい字は補足説明なので、読み飛ばしてもいいです。
図のような折れ曲がった片持ち梁(片持ち折れ梁)を
2要素の梁要素を用いて後でプログラムで解いてみる予定だが、
その前に正解を単位荷重法で求めておきたい。
というわけで、今回は構造力学IIの復習だ。
反力や断面力が力のつりあいだけで求まる静定の折れ梁やラーメンの
各節点の変位を単位荷重法で求められるようになっておくこと。
まず、図のように要素①,要素②,とし、
長さはともに$\ell$, 伸び剛性はともに$EA$, 曲げ剛性はともに$EI$とする。
節点は、固定端が1, 折れ曲がった点が2, 先端が3とする。
図のように
節点1から要素①にそって局所座標$z_{①}^{\ell}$をとり
(といってもこれは全体座標$z$と同じだが)、
節点2から要素②にそって局所座標$z_{②}^{\ell}$をとる。
これらの座標は、後で局所剛性方程式を作るときのためでもあるが、
要素①、要素②の断面力($S$, $N$, $M$)を求める際の座標でもある。
折れ梁やラーメンなど、折れ曲がったものの
断面力($S$, $N$, $M$)を求める際は、
(ラーメンのように下側に囲まれた部分のある構造であれば)
なるべく内側・下側から眺めて、部材に沿って時計回りに座標を取っていく。
もちろん、天井から吊り下げられた構造とか、
囲まれた部分が上側にある場合もあるので、
あくまで目安だが。
まずは、要素①の断面力を求めるため、要素①を任意の点($z_{①}^{\ell}$)で
切り、折れ梁を2つのピースに切り離す。
今回は、(反力を考えなくていい)右側のピースを取り出して力のつりあいを考える。
$z_{①}^{\ell}$は、普通に水平方向なので、
通常の構造力学の向きで断面力($S, N, M$)を切断面に描き入れる。
後は力のつりあいを考える。
$\sum\downarrow=-S=0$ よって$S_{①}=0$
$\sum\rightarrow=-N+P=0$ よって$N_{①}=P$
切断点反時計まわりのモーメントのつりあいを考え
$\sum_{切}\circlearrowleft=-M+P\ell=0$ よって、$M_{①}=P\ell$
次に要素②の断面力を求めるため、要素②を任意の点($z_{②}^{\ell}$)で
切り、折れ梁を2つのピースに切り離す。
今回は、簡単そうな先端側のピースを取り出してつりあいを考える。
断面力($S, N, M$)は、$z_{②}^{\ell}$の関数として求めるのだから、
$z_{②}^{\ell}$を水平右方向として見ながら、
通常の構造力学の向きで断面力($S, N, M$)を切断面に描き入れる。
後は力のつりあい。
$\sum\downarrow=-S-P=0$ よって$S_{②}=-P$
$\sum\rightarrow=-N=0$ よって$N_{②}=0$
切断点反時計まわりのモーメントのつりあいを考え
$\sum_{切}\circlearrowleft=-M+P(\ell-z_{②}^{\ell})=0$ よって、
$M_{②}=P(\ell-z_{②}^{\ell})$
せん断変形は無視するので、軸力と曲げモーメントについてまとめると、
$N_{①}=P$
$M_{①}=P\ell$
$N_{②}=0$
$M_{②}=P(\ell-z_{②}^{\ell})$
まずは簡単な方から。先端の水平右方向変位つまり節点3の$w_{3}$を求める。
変位を求めたい節点の求めたい変位の方向に仮想単位荷重$\overline{1}$を
与える。
計算上は単に荷重として1を与えるだけだが、
「仮想の」荷重であることを強調する際には、適宜、$\overline{1}$みたいに
上バーをつける。
この仮想荷重を与えた仮想構造について、断面力
($\overline{S}, \overline{N}, \overline{M}$)を求める。
といっても、もとの構造の$P$が$1$に変わっただけだから、
上で求めたもとの構造の断面力($S, N, M$)に$P=1$を代入すればよい。
よって、以下のようにこの仮想構造の断面力が求まる。
$\overline{S}_{①}=0$
$\overline{N}_{①}=1$
$\overline{M}_{①}=\ell$
$\overline{S}_{②}=-1$
$\overline{N}_{②}=0$
$\overline{M}_{②}=\ell-z_{②}^{\ell}$
単位荷重法の公式から、
求めたい変位は、
仮想荷重と実変位をかけた補仮想仕事から
求まるが、仮想荷重が1の場合は、求めたい変位そのものになる。
ということで、公式から以下を解けばよい。
十分に細長い梁で、せん断変形の影響は無視しているので、
$\frac{S\overline{S}}{kGA}$みたいなせん断の項は考えない。
$$\overline{1}\cdot w_{3}
=\int_{全部材}\left(
\frac{N\overline{N}}{EA}+\frac{M\overline{M}}{EI}
\right)
dz^{\ell}$$
すべての部材について、
それぞれの軸に沿って端から端まで
(要は、要素が横たわっている局所系の$z^{\ell}$に沿って)
その要素の長さぶんの積分をすればいい。
つまり、
$$\overline{1}\cdot w_{3}
=\int_{全部材}\left(
\frac{N\overline{N}}{EA}+\frac{M\overline{M}}{EI}
\right)
dz^{\ell}$$
$$=
\int_{0}^{\ell}
\frac{N_{①}\overline{N}_{①}}{EA}dz_{①}^{\ell}
+
\int_{0}^{\ell}
\frac{M_{①}\overline{M}_{①}}{EI}dz_{①}^{\ell}
+
\int_{0}^{\ell}
\frac{N_{②}\overline{N}_{②}}{EA}dz_{②}^{\ell}
+
\int_{0}^{\ell}
\frac{M_{②}\overline{M}_{②}}{EI}dz_{②}^{\ell}
$$
$$=\frac{P\cdot 1\cdot\ell}{EA}+\frac{P\ell\cdot\ell\cdot\ell}{EI}
+\frac{0\cdot 0\cdot\ell}{EA}+
\int_{0}^{\ell}\frac{P(\ell-z_{②}^{\ell})^{2}}{EI}dz_{②}^{\ell}
$$
まず、要素①について、
$N_{①}=P$と$\overline{N}_{①}=1$は定数だから、
0から$\ell$までの積分は$\ell$をかけるだけでよい。
$M_{①}=P\ell$と$\overline{M}_{①}=\ell$も定数だから、
この積分も$\ell$をかけるだけ。
次に要素②について、
$N_{②}=0$だし$\overline{N}_{②}=0$だから、積分しても0になる。
$M_{②}=P(\ell-z_{②}^{\ell})$と
$\overline{M}_{②}=(\ell-z_{②}^{\ell})$をかけると
$z_{②}^{\ell}$の2次式になるから、これは
$z_{②}^{\ell}$について積分する必要がある。
$z_{②}^{\ell}$の添字を付けたまま積分すると(特に手計算では)
間違いやすいので、以下では、添字をとって、
$z$の積分に書き換える(積分してしまえば同じ答えになるし)。
$$=\frac{P\ell}{EA}+\frac{P\ell^{3}}{EI}+
\frac{P}{EI}\int_{0}^{\ell}
(\ell^{2}-2\ell z+z^{2})dz$$
$$=\frac{P\ell}{EA}+\frac{P\ell^{3}}{EI}+
\frac{P}{EI}\left[\ell^{2}z-\ell z^{2}+\frac{z^{3}}{3}\right]_{0}^{\ell}$$
$$=\frac{P\ell}{EA}+\frac{4P\ell^{3}}{3EI}$$
では次に、先端の鉛直下方向変位つまり節点3の$v_{3}$を求めてみる。
変位を求めたい節点の求めたい変位の方向に
仮想単位荷重$\overline{1}$を
与えて、この仮想構造の断面力
($\overline{S}, \overline{N}, \overline{M}$)を求める。
今度は、もとの構造とは荷重の向きが違うので、
ちゃんと求める必要がある。
まずは要素①について、
任意の点で切り、2つのピースに切り離す。
今回も(反力を考えなくていい)右側のピースを取り出して力のつりあいを考える。
$z_{①}^{\ell}$は$z$と同じだから、切断点から節点2までの距離は、
$\ell-z$で表しておく。
力のつりあいから、以下が求まる。
$\overline{S}_{①}=1$
$\overline{N}_{①}=0$
$\overline{M}_{①}=-(\ell-z)=z-\ell$
次に要素②について、任意の点で切り離し、今回も先端のピースを取り出して
力のつりあいを考える。
力のつりあいから、以下が求まる。
$\overline{S}_{②}=0$
$\overline{N}_{②}=1$
$\overline{M}_{②}=0$
もとの構造の断面力(せん断以外)は、 $N_{①}=P, \; M_{①}=P\ell,\; N_{②}=0, \; M_{②}=P(\ell-z_{②}^{\ell})$だから、公式から以下のように $v_{3}$が求まる。 $$\overline{1}\cdot v_{3} =\int_{全部材}\left( \frac{N\overline{N}}{EA}+\frac{M\overline{M}}{EI} \right) dz^{\ell}$$ $$= \int_{0}^{\ell} \frac{N_{①}\overline{N}_{①}}{EA}dz_{①}^{\ell} + \int_{0}^{\ell} \frac{M_{①}\overline{M}_{①}}{EI}dz_{①}^{\ell} + \int_{0}^{\ell} \frac{N_{②}\overline{N}_{②}}{EA}dz_{②}^{\ell} + \int_{0}^{\ell} \frac{M_{②}\overline{M}_{②}}{EI}dz_{②}^{\ell} $$ $$ = \frac{P\cdot 0\cdot \ell}{EA}+ \int_{0}^{\ell}\frac{P\ell\cdot(z-\ell)}{EI}dz +\frac{0\cdot 1\cdot\ell}{EA} +\int_{0}^{\ell}\frac{P(\ell-z_{②}^{\ell})\cdot 0}{EI}dz_{②}^{\ell} $$ 2項目の要素①の曲げの項以外はすべて0になる $$ =\frac{P\ell}{EI}\left[\frac{z^{2}}{2}-\ell z\right]_{0}^{\ell} =-\frac{P\ell^{3}}{2EI}$$
先端の$x$軸右ねじ回り($yz$平面では左回り)の回転各$\theta_{3}$を求めてみる。
先端の左回り回転角を求めたいので、先端に左回りの仮想単位モーメント
$\overline{1}$を
与えて、この仮想構造の断面力
($\overline{S}, \overline{N}, \overline{M}$)を求める。
①要素で切断。
$\overline{S}_{①}=0$
$\overline{N}_{①}=0$
$\overline{M}_{①}=1$
②要素で切断。
$z_{②}^{\ell}$軸に沿って眺める。
$\overline{S}_{②}=0$
$\overline{N}_{②}=0$
$\overline{M}_{②}=1$
$$\overline{1}\cdot \theta_{3}
=\int_{全部材}\left(
\frac{N\overline{N}}{EA}+\frac{M\overline{M}}{EI}
\right)
dz^{\ell}$$
$$=
\int_{0}^{\ell}
\frac{N_{①}\overline{N}_{①}}{EA}dz_{①}^{\ell}
+
\int_{0}^{\ell}
\frac{M_{①}\overline{M}_{①}}{EI}dz_{①}^{\ell}
+
\int_{0}^{\ell}
\frac{N_{②}\overline{N}_{②}}{EA}dz_{②}^{\ell}
+
\int_{0}^{\ell}
\frac{M_{②}\overline{M}_{②}}{EI}dz_{②}^{\ell}
$$
$$
=
\frac{P\cdot 0\cdot \ell}{EA}+
\frac{P\ell\cdot 1\cdot\ell}{EI}
+\frac{0\cdot 0\cdot\ell}{EA}
+\int_{0}^{\ell}\frac{P(\ell-z_{②}^{\ell})\cdot 1}{EI}dz_{②}^{\ell}
$$
$$
=\frac{P}{EI}\left(
\ell^{2}
+
\left[\ell z-\frac{z^{2}}{2}\right]_{0}^{\ell}
\right)
=\frac{3P\ell^{2}}{2EI}$$
次回の小テストは、
上のような簡単な片持ち折れ梁を単位荷重法で解く問題。
梁の長さや剛性が要素①と要素②で違う場合。
$w_{3}$については、
ここに答え。
ただし、上側から眺めて時計回りに座標をとっている。
研究室のゼミのときになぐり書きしたものだが、
下付き添字に$\ell_{2}$とついているものを
$\ell_{2}^{2}$と2乗したりすると、手計算ではとても間違いやすい。
現に、この計算は最初は間違っていたので、
後から、添字を画像編集して修正している。