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構造力学I第13回

小さい字は補足説明や余談なので、読み飛ばしてもいいです。

このページのオリジナルの作者は 後藤文彦です。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
構造力学Iオンライン授業用テキスト
第13回オンライン授業

目次

せん断力・曲げモーメントの影響線(単純梁)

前回やった反力の影響線の場合、 $V_{A}(\zeta)$は支点Aの反力の影響線関数だし、 $V_{B}(\zeta)$は支点Bの反力の影響線関数だし、 という具合に、着目している点(支点Aとか支点Bとか)が決まっていた。 せん断力や曲げモーメントの影響線という場合、 ある着目点(この授業では点Cを使うことにする)での せん断力や曲げモーメントが、荷重の移動に伴ってどう変化するかを 考えることになる。 より一般的には、任意の着目点$z$に対する 影響線関数$S(z,\zeta)$や$M(z,\zeta)$を求めることも できるが、それは、やや難しいので、ここではまず、 具体的な1つの着目点についての影響線を考える。

手順1: 反力を求める

ではまず図のように、例えば$z=\frac{2}{3}\ell$の点を着目点Cとし、 点Cでの せん断力と曲げモーメントの影響線関数 $S(z=\frac{2}{3}\ell, \zeta)$, $M(z=\frac{2}{3}\ell, \zeta)$ を求めてみる。 着目点の座標をいちいち書くとめんどくさいので、 これらを $S_{C}(\zeta)$, $M_{C}(\zeta)$と書くことにする。
まずは、前回の要領で反力の影響線関数を求める。 $\zeta$を定数とみなして 普通に力のつりあいから求めればよいが、時間の関係上、 公式を使うと、 $a=\zeta, b=\ell-\zeta$だから、
$V_{A}=\frac{\ell-\zeta}{\ell}$
$V_{B}=\frac{\zeta}{\ell}$
と求まる。

手順2:着目点で切る、手順2:場合分け

内力である せん断力や曲げモーメントを求める場合、梁を切断して断面力が見えるようにして やらなければならない。 任意点$z$での$S(z)$や$M(z)$を求めるときは、 第5回でやったように (場合分けが必用な場合は、場合分けした上で)任意の点$z$で梁を切断したが、 影響線関数を求める場合は、求めるせん断力や曲げモーメントは、 着目点C(今回は$z=\frac{2}{3}\ell$)での値なので、 任意の$z$ではなく、着目点Cで切断する。 すると、 単位荷重が着目点Cより左にある場合と 単位荷重が着目点Cより右にある場合とで場合分けが必用になる。
ではまず、 単位荷重が着目点Cより左にある場合(今回の例では$0\le\zeta\le\frac{2}{3}\ell$) を考える。 梁を着目点Cで2つのピースに切り離し、左側か右側かどちらかのピースを取り出して つりあいを考える。 単位荷重のないピースの方が楽そうなので、今回は右側のピースを取り出す ことにする。 右端の反力は、上で$\frac{\zeta}{\ell}$と求まった。 点Cから右端までの長さは、点Cが$z=\frac{2}{3}\ell$だから、 $\frac{\ell}{3}$である。 任意の$z$で切ったわけではないので、$\ell-z$などと混同しないように。 力のつりあいから、
$\sum\downarrow=-S_{C}-\frac{\zeta}{\ell}=0$ よって、 $S_{C}(\zeta)=-\frac{\zeta}{\ell}\;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{2}{3}\ell)$
$\sum_{C}\circlearrowleft=-M_{C}+\frac{\zeta}{\ell}\cdot\frac{\ell}{3}=0$ よって、 $M_{C}(\zeta)=\frac{\zeta}{3}\;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{2}{3}\ell)$

次に、 単位荷重が着目点Cより右にある場合(今回の例では$\frac{2}{3}\ell\le \zeta\le\ell$) を考える。 梁を着目点Cで2つのピースに切り離し、左側か右側かどちらかのピースを取り出して つりあいを考える。 単位荷重のないピースの方が楽そうなので、今回は左側のピースを取り出す ことにする。 左端の反力は、上で$\frac{\ell-\zeta}{\ell}$と求まった。 左端から点Cまでの距離は、$\frac{2}{3}\ell$である。 任意の$z$で切ったわけではないので、$z$などと混同しないように。 力のつりあいから、
$\sum\downarrow=-\frac{\ell-\zeta}{\ell}+S_{C}=0$ よって、 $S_{C}(\zeta)=\frac{\ell-\zeta}{\ell}\;\;\;\;(\frac{2}{3}\ell\le \zeta\le\ell)$
$\sum_{C}\circlearrowleft=-\frac{\ell-\zeta}{\ell}\cdot\frac{2}{3}\ell +M_{C}=0$ よって、 $M_{C}(\zeta)=\frac{2}{3}(\ell-\zeta)\;\;\;\;(\frac{2}{3}\ell\le \zeta\le\ell)$

以上を整理すると、以下のようになる。
$ S_{C}(\zeta)= \begin{cases} -\frac{\zeta}{\ell} & \;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{2}{3}\ell)\\ \frac{\ell-\zeta}{\ell} & \;\;\;\;(\frac{2}{3}\ell\le \zeta\le\ell)\\ \end{cases} \ \\ M_{C}(\zeta)= \begin{cases} \frac{\zeta}{3} & \;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{2}{3}\ell)\\ \frac{2}{3}(\ell-\zeta) & \;\;\;\;(\frac{2}{3}\ell\le \zeta\le\ell)\\ \end{cases} $
ここで注意すべきことは、 $(0\le\zeta\le\frac{2}{3}\ell)$や$(\frac{2}{3}\ell\le \zeta\le\ell)$と いった領域の意味は、 その領域に荷重がある場合という意味であって、 その領域の$S$や$M$を表しているわけではない。 $S_{C}$や$M_{C}$は、あくまで点C(今回は$z=\frac{2}{3}\ell$)での$S$や$M$を表しているので 混同しないように。

影響線を描く

横軸を$\zeta$とし、縦軸を$S_{C}(\zeta)$や$M_{C}(\zeta)$として、 影響線を描く。$S$図や$M$図に対応させて、 この授業ではせん断力の影響線は上を正、曲げモーメントの影響線は下を正とする。 $S_{C}(\zeta)$も$M_{C}(\zeta)$も$\zeta$の1次式だから直線である。 領域の両端の値を求めて、それらを直線で結べばよい。
公式を使って手早く描く場合はこちら参照。 $ S_{C}(\zeta)= \begin{cases} -\frac{\zeta}{\ell} & \;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{2}{3}\ell) \;\;\;\; S_{C}(0)=0,\;\;\;\; S_{C}(\frac{2}{3}\ell)=-\frac{2}{3} \\ \frac{\ell-\zeta}{\ell} & \;\;\;\;(\frac{2}{3}\ell\le \zeta\le\ell) \;\;\;\; S_{C}(\frac{2}{3}\ell)=\frac{1}{3} \;\;\;\; S_{C}(\ell)=0 \\ \end{cases} $
$\zeta=\frac{2}{3}\ell$のところで、$S_{C}$はマイナスからプラスにジャンプしている。 この意味は後で説明する。 荷重が着目点の左にあるときも右にあるときも$\zeta$の係数は$-1$だから、 どちらの直線も傾き$-1$で平行である。 $ M_{C}(\zeta)= \begin{cases} \frac{\zeta}{3} & \;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{2}{3}\ell) \;\;\;\; M_{C}(0)=0, \;\;\;\; M_{C}(\frac{2}{3}\ell)=\frac{2}{9}\ell \\ \frac{2}{3}(\ell-\zeta) & \;\;\;\;(\frac{2}{3}\ell\le \zeta\le\ell) \;\;\;\; M_{C}(\frac{2}{3}\ell)=\frac{2}{9}\ell, \;\;\;\; M_{C}(\ell)=0 \\ \end{cases} $
$M_{C}$の方は、点Cでジャンプしない。

さて、せん断力の影響線$S_{C}(\zeta)$が、 着目点Cをまたいで、マイナスからプラスにジャンプする理由だが、 荷重が着目点Cより左にある場合、図のように 着目点Cは右上がりになるから、せん断力はマイナスになる。 一方、荷重が着目点Cより右にある場合は、図のように 着目点Cは右下がりになるから、せん断力はプラスになる。

せん断力・曲げモーメントの影響線(片持ち梁)

図のような片持ち梁の$z=\frac{\ell}{2}$の点Cでのせん断力、 曲げモーメントの影響線を求めてみよう。 この場合、(反力のない方のピースを取り出すなら)反力を求めなくても、 $S_{C}(\zeta), M_{C}(\zeta)$は求められるが、 前回、既に求めているので、 反力は、$V_{A}(\zeta)=1, \;\;M_{A}(\zeta)=-\zeta$である。

まず、梁を切るのは着目点Cと決まっているので、 荷重が着目点Cより左にある場合($0\le\zeta\le\frac{\ell}{2}$)と 荷重が着目点Cより右にある場合($\frac{\ell}{2}\le\zeta\le\ell$)とで 場合分けする。
まず、荷重が着目点Cより左にある場合($0\le\zeta\le\frac{\ell}{2}$)を考える。
梁を着目点Cで2つのピースに切り離し、左側か右側かどちらかのピースを取り出して つりあいを考える。 単位荷重のないピースの方が楽そうなので、今回は右側のピースを取り出す ことにする。 点C($z=\frac{\ell}{2}$)から右端までの長さは$\frac{\ell}{2}$である。 任意点$z$で切ったわけではないので、$\ell-z$とかにはならない。 力のつりあいから、
$\sum\downarrow=-S_{C}=0$ よって、 $S_{C}(\zeta)=0\;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{\ell}{2})$
$\sum_{C}\circlearrowleft=-M_{C}=0$ よって、 $M_{C}(\zeta)=0\;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{\ell}{2})$

次に、荷重が着目点Cより右にある場合($\frac{\ell}{2}\le\zeta\le\ell$)を考える。
梁を着目点Cで2つのピースに切り離し、左側か右側かどちらかのピースを取り出して つりあいを考える。 反力がない方が楽そうなので、今回は単位荷重のある 右側のピースを取り出すことにする。 図のように、梁全体の左端から単位荷重のある位置までの長さが$\zeta$だから、 切断した着目点C($z=\frac{\ell}{2}$)から単位荷重のある位置までの長さは、 $\zeta-\frac{\ell}{2}$となる。 こういうのは、梁の全体を描いて落ち着いて考えるとよい。 力のつりあいから、
$\sum\downarrow=-S_{C}+1=0$ よって、 $S_{C}(\zeta)=1\;\;\;\;(\frac{\ell}{2}\le\zeta\le\ell)$
$\sum_{C}\circlearrowleft=-M_{C}-1(\zeta-\frac{\ell}{2})=0$ よって、 $M_{C}(\zeta)=-(\zeta-\frac{\ell}{2})\;\;\;\;(\frac{\ell}{2}\le\zeta\le\ell)$
もちろん、$M_{C}(\zeta)=\frac{\ell}{2}-\zeta$と書いてもよい。 $\zeta-\frac{\ell}{2}$などの正の長さを正の長さのまま書いておいた方が、 モーメントが正なのか負なのかわかりやすいという程度のことである。

以上をまとめて、1次式については各領域の両端の値を求める。
$ S_{C}(\zeta)= \begin{cases} 0 &\;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{\ell}{2})\\ 1 &\;\;\;\;(\frac{\ell}{2}\le\zeta\le\ell) \\ \end{cases} $
$ M_{C}(\zeta)= \begin{cases} 0 &\;\;\;\;(0\le\zeta\le\frac{\ell}{2})\\ -(\zeta-\frac{\ell}{2}) &\;\;\;\;(\frac{\ell}{2}\le\zeta\le\ell) \;\;\;\;M_{C}(\frac{\ell}{2})=0,\; M_{C}(\ell)=-\frac{\ell}{2} \end{cases} $

例題

着目点Cでのせん断力、曲げモーメントの影響線関数 $S_{C}(\zeta), M_{C}(\zeta)$を求め、 その影響線(せん断力は上が正、曲げモーメントは下が正)を描け。 答えは、 ここ。 動画の解説は、 第13回 例題

ここ

ここ

ここ

2020年度小テスト: 問1, 問2, 問3, 問4, 解答

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メモ: