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構造力学I第4回

小さい字は補足説明や余談なので、読み飛ばしてもいいです。

このページのオリジナルの作者は 後藤文彦です。
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構造力学Iオンライン授業用テキスト
第4回オンライン授業

目次

部材力

では、図のような正三角形が3つ並んでいる トラスの部材力を求めてみよう。 反力は3つだから、外的静定で、 力のつりあいだけで反力が求まる。 この問題のように外力が$P$と文字変数で与えられている場合に 反力を求めるというのは、反力を$P$で表すという意味だ。 これは、第2回の要領で解けばいいだろう。
まず鉛直方向のつりあい: $\Sigma\downarrow=-V_\text{A}+P -V_\text{C} =0$
水平方向のつりあい: $\Sigma\rightarrow=H_\text{A}=0$
つまり$H_\text{A}=0$で水平反力はないということだ。
モーメントのつりあいは、どの点回りでもいいが、 今回は点C回りで考える。 点Cを回転中心にして、 $V_\text{A}$方向に押すとトラスは右回りするから、 左回りで足し算する場合は$V_\text{A}$がつくるモーメントはマイナス。 点Cを回転中心にして、 $P$方向に押すとトラスは左回転するから、 左回りで足し算する場合は$P$がつくるモーメントはプラス。 ($H_\text{A}$は見やすいようにヒンジ支承の下に描かれているが) $H_\text{A}$の作用点は点Aなので、 作用線上に点Cがあるため、点C回りにはモーメントをつくらない。 $V_\text{C}$も作用線上に点Cがあるから、点C回りにはモーメントをつくらない。
$\Sigma_\text{C}$ $=-V_\text{A}\cdot 2\ell + P\cdot \frac{\ell}{2}=0$
よって $V_\text{A}=\frac{P}{4}$
これを$-V_\text{A}+P -V_\text{C} =0$に代入し、
$V_\text{C}=\frac{3}{4}P$
さて、反力は求まった。 次に部材力だが、一応、内的静定・不静定を判定すると、 $m=7, r=3, j=5$で$m+r-2j=7+3-2\times 5=0$となり内的静定だから、 力のつりあいだけで部材力が求まるはずである。

切断法(断面法)

トラスの部材力は、トラス部材の内力としての断面力(軸力)だから、 トラス部材を切らないと見えるようにならない。 トラス部材の切り方は色々とあり得るが、 ここでは、トラス部材を3箇所で切って2つのパーツに切り離す 切断法とか断面法 と呼ばれる方法を教える。 図のように適当な部材3本を切って、 トラスを2つのパーツに切り離してやる。 4本以上 切ると解けなくなるので注意。 そうすると、部材が切られたことにより、それぞれの切断面に、 軸力としての部材力が見えるようになる。 部材力や軸力の定義は一般に引張が正なので、切断面から飛び出る向きに書く。 つまり、圧縮力の場合は符号がマイナスになる。 特定の トラス部材を表すときは、格点の記号A, B, C, D, E使って、 部材ADとか部材DEみたいに書くが、 部材力についても、部材ADの部材力なら、$N_\text{AD}$, 部材DEの部材力なら、$N_\text{DE}$みたいに書く。 ちなみに、$N_\text{DA}$とか$N_\text{ED}$みたいに書いても どっちでもいい(部材力は、引張が正という定義なので、 ADとかDAといった方向性に意味はない)。 軸力の記号は$N$を使うことが多いが、 これは、断面に垂直な normal force から来ているのだろうか。 ちなみに、軸力の英語は、axial force. さて、3箇所で切り離すということなので、例えば部材DE, 部材BD, 部材ABの 3本を切り離して、 その切断面に生じる部材力をそれぞれ、 $N_\text{DE}, N_\text{BD}, N_\text{AB}$とすると、 それぞれの部材力は、切り離された切断面の双方に、 同じ大きさで反対向きに作用している作用・反作用の関係にあるから、 これらの切断面をくっつければ、部材力はプラマイゼロになって、 外力としては見えなくなる。 部材力を求めるというのは、これらの部材力を 外力$P$を用いて表すということだ。 今、トラスを2つのパーツに切り離したが、 これらのそれぞれで力のつりあいが成り立っているから、 そのどちらか簡単そうな方に着目すればよい。 なんとなく左側のパーツの方が簡単そうな感じがするので、 今回は左側のパーツを取り出して、つりあいを考える (もちろん、右側のパーツでつりあいを考えても構わない)。

この左側のパーツで、未知数は、 $N_\text{DE}, N_\text{BD}, N_\text{AB}$の3つだ。 そうすると、力のつりあい(鉛直、水平、モーメント)の3つの式で、 これら3つの部材力が求まるはずだ。 やってみよう。

$N_\text{BD}$は、斜めの力だから、 鉛直、水平方向成分に分解してやる。
まずは鉛直方向のつりあい: $\Sigma\downarrow=-\frac{P}{4}+\frac{\sqrt{3}}{2}N_\text{BD}=0$
つまり、$N_\text{BD}=\frac{P}{2\sqrt{3}}=\frac{\sqrt{3}}{6}P$
水平方向のつりあい: $\Sigma\rightarrow=N_\text{DE}+\frac{N_\text{BD}}{2}+N_\text{AB}=0$
モーメントのつりあいは、どの点回りに考えてもよいが、 $N_{BD}$のような斜めの力がモーメントを作らない点回りに考えた方がよい。 ということで、今回は点D回りのモーメントのつりあいを考える。 $N_{BD}$の作用点を切断面として考えると、 分解された鉛直成分や水平成分のそれぞれは、点D回りにモーメントを つくるが、分解前の$N_{BD}$がモーメントをつくらなければ、 分解されたそれぞれの成分が作るモーメントは、合計すればゼロになる ということだ(心配な人は、例えば切断点を$\frac{\ell}{2}$とかにして確かめてみよう)。 $N_\text{DE}$も作用線上に点Dがあるから、点D回りのモーメントはつくらない。 そうすると、点D左回りのモーメントは、 点Dを中心にして、 $\frac{P}{4}$方向に押すと右回りだから、 これはマイナスのモーメント。$\frac{P}{4}$の作用線から点Dまでの腕の長さは $\frac{\ell}{2}$. 点Dを中心にして、 $N_\text{AB}$の方向に押すと左回りだからプラスのモーメント。 $N_\text{AB}$の作用線から点Dまでの腕の長さは$\frac{\sqrt{3}}{2}\ell$.
$\Sigma_\text{D}$ $=-\frac{P}{4}\cdot\frac{\ell}{2}+N_\text{AB}\cdot\frac{\sqrt{3}}{2}\ell=0$
よって $N_\text{AB}=\frac{P}{4\sqrt{3}}=\frac{\sqrt{3}}{12}P$
$N_\text{BD}=\frac{\sqrt{3}}{6}P$と $N_\text{AB}=\frac{\sqrt{3}}{12}P$ を $N_\text{DE}+\frac{N_\text{BD}}{2}+N_\text{AB}=0$に代入して、
$N_\text{DE}+\frac{\sqrt{3}}{12}P+\frac{\sqrt{3}}{12}P=0$
よって、$N_\text{DE}=-\frac{\sqrt{3}}{6}P$
このように、 $N_\text{DE}, N_\text{BD}, N_\text{AB}$の3つの部材力が求まる。 ちなみに、 $N_\text{DE}<0, N_\text{BD}>0, N_\text{AB}>0$であるから、 $N_\text{DE}$は圧縮力、$N_\text{BD}$と$N_\text{AB}$は引張力という ことになる。
ところで、今、鉛直方向のつりあい、水平方向のつりあい、 点Dまわりのモーメントのつりあい、の3つのつりあいの式を使ったが、 他の点まわりにモーメントのつりあいが使えそうだったら、 モーメントのつりあいを2つ以上 使ったって構わない。 しかも、モーメントの中心は、着目しているパーツ内にない点でもよい。 例えば、左側のパーツ内には含まれない点Bまわりのモーメントを 考えてみる。$N_\text{BD}$の作用線は点Bを通るから、$N_\text{BD}$はモーメントを 作らない。$N_\text{AB}$の作用線も点Bを通るから、 $N_\text{AB}$もモーメントを作らない。 そうすると、点$B$まわりにモーメントをつくるのは$N_\text{DE}$一つだけとなり、 連立させなくても一発で$N_\text{DE}$が求まる。
$\Sigma_\text{B}$ $=-\frac{P}{4}\cdot\ell-N_\text{BD}\cdot\frac{\sqrt{3}}{2}\ell=0$
これなら連立させずに一発で $N_\text{DE}=-\frac{\sqrt{3}}{6}P$が求まり楽である。

左側のピースでまだ求まっていない部材力は、$N_\text{AD}$だ。 これを片付けてしまおう。 $N_\text{AD}$を見えるようにするには、部材ADを切らなければならない。 部材ADと部材ABの2箇所を切って、格点Aまわりのパーツを取り出してみる。 $N_\text{AB}=\frac{\sqrt{3}}{12}P$は既に求まっているので、 未知数は$N_\text{AD}$の1つだ。 このパーツについて、鉛直方向、水平方向の力のつりあいが使える。 このパーツに作用するすべての力は、 作用線が点Aを通るのでモーメントのつりあいは使えない。 $N_\text{AD}$は斜めなので、鉛直、水平成分に分解して、 鉛直方向か水平方向のつりあいを考えればよい。 鉛直方向の方が簡単そうなので、今回は鉛直方向のつりあいを考える。
$\Sigma\downarrow=-\frac{P}{4}-\frac{\sqrt{3}}{2}N_\text{AD}=0$
$N_\text{AD}=-\frac{P}{2\sqrt{3}}=-\frac{\sqrt{3}}{6}P$
さて、このように、格点まわりの部材をすべて切り離し、 格点まわりのピースだけを取り出して、 鉛直方向、水平方向のつりあいだけを使って部材力を求める方法を 格点法とか節点法 と言う。 今回の場合、 例えば点Bの回りには4本の部材があるから、 4本の部材を切り離して、点B回りのピースを取り出したら、 未知数が4つ ($N_\text{AB}, N_\text{BD}, N_\text{BE}, N_\text{BC}$)となり、 当然、このピースのつりあい (しかも鉛直、水平の2つ)だけでは部材力は求まらない。 あるいは、点D回りの3本の部材を切り離して、 点D回りのピースを取り出したら、 未知数は3つ ($N_\text{AD}, N_\text{BD}, N_\text{DE}$)だけど、 つりあいの式は鉛直、水平の2つだから、 やはりこのピースだけでは部材力は求まらない。 つまり、格点法というのは、 格点まわりの部材をすべて切り離して、 格点まわりのピースをばらばらにし、 それぞれのピースについて鉛直、水平の2つのつりあいの式をたて、 それらを連立させて解くというやり方だ。 みなさんには、 モーメントのつりあいを有効利用できるようになってほしいので、 まずは、切断法で主要な部材力を求め、 残った部材力を、適宜、格点まわりだけ切り離して求めるという やり方に慣れてもらえばいいかなと思う。

残りの部材力を求めよう。 今度は右の方の部材DE, BE, BCの3箇所を切って、2ピースに切り離す。 2ピースのどちらに着目してもいいが、 今回は右側のピースを取り出してつりあいを考える。 $N_\text{BE}$は斜めなので、鉛直、水平成分に分解する。 $N_\text{DE}=-\frac{\sqrt{3}}{6}P$は既にわかっている。
鉛直方向のつりあい: $\Sigma\downarrow=P+\frac{\sqrt{3}}{2}N_\text{BE} -\frac{3}{4}P=0$
よって、$N_\text{BE}=-\frac{P}{2\sqrt{3}}=-\frac{\sqrt{3}}{6}P$
水平方向のつりあい: $\Sigma\rightarrow=-(-\frac{\sqrt{3}}{6}P) -\frac{N_\text{BE}}{2}-N_\text{BC}=0$
つまり、 $\frac{\sqrt{3}}{6}P +\frac{\sqrt{3}}{12}P-N_\text{BC}=0 \\ $
よって $N_\text{BC}=\frac{\sqrt{3}}{4}P$

あと求まってない部材力は、$N_{EC}$だけだ。 これは、 格点C回りの部材2本を切り離して考えよう。 $N_\text{BC}=\frac{\sqrt{3}}{4}P$は既に求まっているから、 $N_{EC}$は、斜めの部材力だから鉛直、水平に分解して、 鉛直か、水平、どっちかのつりあいを考えればいい。 これは水平でいくか。
水平方向のつりあい: $\Sigma\rightarrow=-\frac{\sqrt{3}}{4}P -\frac{N_\text{EC}}{2}=0$
$N_\text{EC}= -\frac{\sqrt{3}}{2}P$
これですべての部材の部材力が求まった。

例題

以下のトラスについて切れ目を入れた3本の部材の部材力を求めよ。
答えはここ

答えはここ

答えはここ

答えはここ。 動画の解説は、ここ

2020年度 小テスト: 問題, 解答