橋梁について木材と鋼材を使って色々研究しています. 写真は左上から ・ノルウェーオスロの「アクロバテン歩道橋」 ・スイス サンモリッツの山中にある石橋 ・スイスサンモリッツからマッターホルンの街までいく「氷河急行」の車窓から見える屋根付きの橋 ・ダ・ヴィンチの橋の模型(ミラノのダ・ヴィンチ博物館) ・三種町の木橋 ・ノルウェーの島にわたる斜張橋(名称不明) ・ノルウェーの街中にあったトラス橋(名称不明) 2023年に私が撮影した橋梁コレクションの一部です.
CO2排出量の削減の観点から,屋外木質構造物での炭素固定が期待される土木分野でも「木材の積極利用」が叫ばれるようになり,杭やガードレール等への木材の適用が模索されているが,橋梁床版など大型土木構造物へ木質材料を適用する際の障害となる課題が2つある. 課題1 純粋に構造部材として鋼材やコンクリートなどの一般的な建設部材に比べて剛性が低い 例えばヤング率で比較すると鋼材は205GPa,木材は10GPa程度 課題2 繊維方向に依存する異方性が強く,二軸曲げの双方に一定の剛性が要求される床版等のパネル材への利用には制約がある 木材は縦方向、年輪に垂直な方向、年輪の接線方向に関して強度などの性質が異なるので異方的な材料である。(Wikipediaより). そこで 剛性と異方性を飛躍的に改善する新たな木質パネル材の開発 を目指します!!!!
構造研究室では,剛性と異方性を飛躍的に改善するために様々な材料を木材の間に挟むことを提案! 案1: 鉄筋 最初に,木材パネルではなく,木材梁を作成し,その中心に鉄筋を挟んでみました. ・中心に穴を開けるのが大変(やすりなども活用) ・いまいちうまく挟めない ・重くなる ・強度は少し増した(ように感じる)が剛性があがったとはいえない‥ 作るのが大変な割に,思ったような効果なし‥ 案2:アラミドシート 次に,コンクリートの補剛などにも使われるアラミドシートを挟んでみることにしました.FRPなどは結構使われていましたが,アラミドはそこそこ初めて,かな‥? ・簡単に挟める.先に接着剤を塗布しておくことでアラミドシートがパリッとして挟みやすい ・作り方が非常に簡単! ・剛性もそこそこあがった(実験結果より) ・靭性もそこそこアップ!!(実験結果より(音が出ます)) いい感じなのでパネルへの適用も検討中. 案3:竹シート アラミドもいいけど,環境問題にもっといいものって考えると,自然素材で引っ張りに強い,竹! こちらは現在進行形で色々と試し中です!乞うご期待.
腐食は,鋼部材にとって避けがたい劣化現象である. この腐食を防止するために,一般的に防錆・防食として塗装が行われるが,経年に伴う塗膜の劣化は避けられない問題である. 近年,落橋事故なども発生していることから,1980 年代から 90 年代に架設された吊り材を有する橋梁にとって,ケーブル腐食は特に考慮すべき問題となっている.実際に国内でも,橋梁全体の崩壊に至るような重大なケーブル破断や損傷が報告されている
台湾で実際に起きた落橋事故との比較 左上の動画が実際の落橋時の防犯カメラの映像で,右下の動画が研究室で数値解析した結果の動画です. ケーブルが腐食すると「錆びてボロボロになる」イメージはあると思いますが,力学的にどんな風に変化するか,は実験的に検討されていますが,サビの具合や場所によって大きな違いがあると考えられます, 私たちの研究室では,錆びたケーブルは「伸びにくくなる」,すなわち「限界に達するとブチッと切れてしまう」ような状態を数値解析でモデル化しています. また,「連鎖崩壊」という壊れ方が特徴的であるので,最初の一本が破断したら,その後ジッパーを開けるように,順番にぶちぶち切れていくような状況が再現できるか,も検討課題としています. 解析結果と落橋事故の動画を比較すると,見た目的にはよく似た現象を表しているように見えませんか? 解析的にも力学的にもうまく再現できているかどうか,そして連鎖崩壊が発生した際にはどのようなことが起きているのか(応力の集中や分散など)を検討するのがこの研究です. これまでに斜張橋と,こちらのタイドアーチ橋で行っているので,今後はもっと橋梁の種類を増やしたいと考えています!
ケーブルが腐食していない斜張橋モデルと,ケーブル腐食が非常に進行した状態の斜張橋モデル,それぞれに縦揺れの振動を与えると違いが‥? 地震大国である日本は,橋梁の設計時に必ず地震荷重を考慮しています. 明石海峡大橋が,阪神大震災で1m伸びてしまったのは有名な話ですが (日経XTECH記事参照), では,設計時ぴっかぴかのケーブルで吊っていた斜張橋のケーブルがもしも錆びていたら,地震に対して設計時と同じように耐えることができるかな? そんな疑問から始まったのがこの研究です! 左上がケーブルがピカピカの状態,(健全時,と呼んでます),右下がケーブルがボロボロの状態,それぞれに縦揺れを与えると,どんな違いがあるかわかりますか? こちらの研究も見た目だけで判断せず,解析的に合点がいくものなのか,力学的にはどうなっているのか,など日々議論しています(かっこいい感じがしますね)
木材ハイブリッド部材の開発:オーストラリアとの共同研究 ・竹と竹シート,アラミドシートとの比較 ・接着剤の種類 ・異方性の検討 木材を補剛材として利用する ・鋼橋とのコラボ:実在の合成桁への適用をめざす ケーブル腐食の検討 ・連鎖崩壊解析において衝撃荷重の検討 ・他の種類の橋梁への適応 ・ケーブル腐食の再現方法の検討 ・腐食ケーブルの特徴 ・地震,風などの外力と腐食の関係 など,密かに色々計画しているので, ・橋が好き! ・木材の可能性を信じたい! ・鋼橋の未来を守りたい!(ちょっと大袈裟かな... ) ・ケーブルのサビについてもっと知りたい そんな方には楽しい研究が結構あるかもしれません!