芦川第二橋 現場見学


はじめに

今回は、現在建設中である日本海東北自動車道の芦川第二橋の架設現場を見学にいったのでそれを報告します。
※日本海東北自動車道・・・現在、新潟以北の日本海沿岸において高速道路がなく、日本海沿岸の主要都市間の交通は一般国道に依存している状態となっている。そこで、日本海東北自動車道の建設が進められている。これは、新潟市を拠点とし秋田県河辺町で秋田自動車道に接続するまでの総延長約340kmの高速自動車道であり、日本海沿岸域の物流・観光事業の活性化が期待されている。


芦川第二橋

今回見学に行った橋梁の概要を説明します。芦川第二橋は日本海東北自動車道の本荘〜岩城間に計画された、橋長356mの5径間連続波型鋼板ウェブPC橋です。橋脚と主桁は支承により支えられた連続桁形式でPCケーブルにより仮固定を行い、トラベラーによる張り出し施工を行います(一部支保工区間あり)。桁高は全橋に渡り一定(4.5m)で、ウェブは傾斜しスレンダーな印象を与えます。側面には波型鋼板の陰影が生まれ、表情豊かで周辺の自然景観に溶け込む景観性に優れた橋梁です。
波型鋼板ウェブは従来のPC箱桁のウェブを波型鋼板に置き換えた、コンクリート(concret)と鋼(steel)の複合構造となっています。波型鋼板ウェブにするこで次のようなメリットが生まれます。

●主桁重量の軽減・・・日本のような地震の多い国では軽量な主桁を採用することで橋脚や基礎を小規模なものにできます。今回見学した芦川第二橋では連続形式となっており連続となることも地震の影響を軽減でき、他に橋脚と主桁が一体となった構造もそのことが言えます。芦川第一橋ではこの形式です。第二橋は一体となっていませんが、免震支承を用いており、大規模な地震にも耐えるようになっています。

●工期短縮・工期低減・・・ウェブの鉄筋組み立て、型枠設置が省略されること、張り出し施工では主桁が軽量なためブロック長が伸ばせるなどから工期短縮、工費低減が可能となる。

●アコーディオン効果・・・波型鋼板は、アコーディオン効果により軸方向に自由に変形できるため、主桁へのプレストレス導入効率の向上が図れます。

●高せん断座屈耐力・・・一般に鋼材はコンクリートに比べ数十倍ものせん断応力が作用しても問題ありませんが、座屈という現象を起こしやすいという特徴があります。鋼板を波型とすることで座屈に対する耐力が飛躍的に向上します。


現場の様子(September 17, 2004)

中央径間を下から見た様子 主桁断面と床版上面の様子
写真1が芦川第二橋の中央径間にあたる部分で両サイドの橋脚からトラベラー(移動作業車)による片持ち張り出し架設工法を用いた施工を行い、ちょうど組み合わさった状況です。この際、両サイドのウェブをうまく接合させることが難しいそうですが、今回はうまくいったそうです。さらに、ウェブの色が変わっているのがウェブの接合部分でそのうち同じ色に塗装されます。あと、橋脚につて鋼管コンクリートとの複合構造になっており地震に強くなっています。高さは約48mあります。写真2は主桁断面と床版上面の様子です。これは、側径間にあたる部分であと少しで桁が支承まで届くといった状況です。両者の写真からサイドが波をうっていることが分かると思いますが、これが波型鋼板ウェブです。そして、上床版と下床版がコンクリートでできていることがわかると思います。

カンチレバーケーブル 桁内部から見た波型鋼板ウェブ
そして、これが桁内部です。まさか桁の中に入れるとは思ってなかったのでびっくりでした。写真3はカンチレバーケーブルです。少し見にくいですが、透明な筒の中にワイヤーみたいなものが入ってることが分かると思います。これはPC鋼材です。透明なのでしっかりとグラウトを行っているか分かるようになっています。グラウトとは鋼材の入った筒の中に接着剤を流し込み隙間をうめることです。写真4は桁内部からみた波型鋼板ウェブです。桁内部は薄暗く、ライトの光だけが頼りです。隔壁についてはどのくらいの間隔になっているのかは聞くのを忘れました。

片持ち張り出し施工を対面から見た様子 免震支承
写真5は片持ち張り出し施工の対面から見た様子です。これが徐々に延びていきくっつくというわけです。黄色い機械がトラベラー(移動作業車)で、足場を解体するときは吊るした状態で下まで降ろします。写真6は免震支承です。この上に桁が載ります。

芦川第一橋 芦川第一橋
写真6と7は芦川第一橋です。後ろにトンネルがあります。芦川第二橋…芦川第一橋…トンネルとなっています。奥に橋脚が見えると思いますが高さは約48mあります。ちなみに、芦川第一橋の橋梁形式はPC4径間連続箱桁ラーメン橋です。


参考文献

パンフレット…日本海東北自動車道 芦川第二橋(PC上部工)工事 波型鋼板ウェブPC橋(日本道路公団 大成建設株式会社)


今回やっと構造系らしいページができました。というか自分の勉強もかねてるんですけどね。今後、機会があればどんどんこういうページを増やしていこうと考えています。「この意味がわからない」「詳しい図を入れた方がいい」「これはどういう利点があるのか」「この説明は間違ってる」とかありましたら、メールを頂けると非常に嬉しいです。誰にでも読めるような分かりやすいかつ見やすいページを目指していますのでよろしくお願いします。

page top↑

Report top


HOME